A Maiden Most Gentle《こよなく優しきおとめ(あめのきさき)》


A maiden most gentle
and tender we sing
Of Mary the mother
of Jesus our King
Ave, Ave, Ave Maria.
こよなく優しきおとめ
いたいけなお方を我らは歌う
み母なるマリア
我らの王イエスのみ母を
めでたし、めでたし、めでたし、マリア」と

How blest is the birth
of her heavenly child
Who came to redeem us
in Mary so mild
Ave, Ave, Ave Maria.

この生誕のいかに祝されしことか
天の幼子の生誕は
そのお方は我らをあがなうために来られた
柔和なるマリアのうちに
めでたし、めでたし、めでたし、マリア

The archangel Gabriel
foretold by his call
The Lord of creation
and Saviour of all
Ave, Ave, Ave Maria.
大天使ガブリエルが
その挨拶で預言した
造り主にして
万物の救い主を
めでたし、めでたし、めでたし、マリア

Three kings came to worship
with gifts rich and rare
And marveled in awe
at the babe in her care
Ave, Ave, Ave Maria.
三人の王が礼拝しにやってきた
高価で珍しい贈り物を持って
そして畏れつつ驚嘆した
おとめが守る赤ん坊に
めでたし、めでたし、めでたし、マリア

Rejoice and be glad
at this Christmas we pray
Sing praise to the Savior
sing endlessly Ave
Ave, Ave, Ave Maria.
歓べ、喜べ、
このクリスマスに我らは祈る
救い主をほめ歌え、
絶えることなく「めでたし」と歌え
めでたし、めでたし、めでたし、マリア

text: イングランドの聖人ベーダ・ヴェネラビリス(Beda Venerabilis 672/673-735 尊者ベーダの意)の詩をAndrew Carter(1939-)が英訳
tune: フランスの聖歌Ave Maria de Lourdes《めでたしルルドのマリア(あめのきさき)》をAndrew Carter(1939-)によりアレンジ


Choir of King's College, Cambridge/Sir Philip Ledger
収録アルバム: Christmas At King's

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# by CockRobin96 | 2017-10-18 10:02 | Trackback | Comments(0)

Cantique de Jean Racine《ジャン・ラシーヌの賛歌》



Verbe égal au Très-Haut,
いとも高きみ言(ことば)よ、*1
notre unique espérance,
我らの唯一なる望みよ。
Jour éternel de la terre et des cieux,
かの天地がとこしえとなる日、*2
De la paisible nuit
安息の夜から目覚め
nous rompons le silence:
我らは沈黙を破る。
Divin Sauveur,
神々しき救い主よ、
jette sur nous les yeux.
その眼差しを我らに投げかけ給え。

Répands sur nous
我らの上に行き渡らせ給え
le feu de Ta grâce puissante;
御身の限りない恵みの炎を。
Que tout l'enfer
あらゆる地獄のものを
fuie au son de Ta voix;
御身のみ声の響きより逃げ去らせ給え。
Dissipe le sommeil
眠りを散らし給え
d'une âme languissante
魂を衰えさせるものを。

Qui la conduit à l'oubli de Tes lois!
誰が御身のみ法(のり)を忘れ得ようか!

Ô Christ! sois favorable
おおキリストよ! 善きに計らい給え
à ce peuple fidèle,
この信仰に満ちた民を、
Pour Te bénir
御身を祝すため
maintenant rassemblé;
今集える者らを。
Reçois les chants qu'il offre à Ta gloire immortelle,
御身の不滅の栄光に献げたる歌を受け給え、
Et de Tes dons qu'il retourne comblé.
そして御身の賜物を満たし返し給え。

*1 「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。(ヨハネによる福音書1:14)」より、神のみ言(ことば)とはキリストを指す。→Verbum Patris Umanatur《父の御言葉が人となる》
*2 「最後の審判の日」と解釈することもあれば、Jour(英語のDayに相当)を昼の日光と解釈し、キリストを「天地を照らす永遠の太陽」に例えていると解釈することもある。アンブロシウスの原詩では「lux ipse lucis et dies(光の光、日の光なり)」となっている部分を、ラシーヌが拡大解釈したとも取れる。

text: イタリアの聖人Ambrosius(c.339-397)の詩『Consors paterni luminis(光を分け与える父よ)』をJean Baptiste Racine(1639-1699)がフランス語に意訳したもの。
tune: Gabriel Fauré(1845-1924)

「ラシーヌの雅歌」とも。元々は、フォーレが音楽学校の卒業作品として作曲したもので、これによって作曲部門一等で卒業している。当時19歳だか20歳だかくらい。しゅごい。
ラシーヌは17世紀フランスの劇作家。本人は歴史劇作家のつもりだが、大体悲恋ものが多いので悲劇作家と認識されている。
比類ない美しいメロディーで、合唱団のレパートリーとして人気が高い。

オーケストラ伴奏版
Michel Plasson & Orféon Donostiarra
収録アルバム: Classical Chill Out


オルガン伴奏版
Eduard Vila i Perarnau
収録アルバム: O Vos Omnes


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# by CockRobin96 | 2017-10-04 10:07 | Trackback | Comments(0)

A Frog He Would A-Wooing Go《カエルくんの求婚》

笑顔で食われるのやめろ



A frog he would a wooing go,
Heigh ho! says Rowley,
A frog he would a-wooing go,
Whether his mother would let him or no.
カエルくんが求婚しにゆく
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
カエルくんが求婚しにゆく
おっかさんが行かせようと行かせまいと

*With a rowley, powley, gammon, and spinach,
 Heigh ho! says Anthony Rowley.
*ローリィ、ポーリィ、ベーコンにホウレンソウ*1
 ヘイ・ホー! アンソニー・ローリィと言うのさ

So off he set with his opera hat,
Heigh ho! says Rowley,
So off he set with his opera hat,
And on the road he met a rat,
*Refrain
カエルくんはオペラハットでおめかし*2
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
カエルくんはオペラハットでおめかし
すると道中大ネズミと出会った*3
*繰り返し

"Pray, Mr. Rat, will you go with me,"
Heigh ho! says Rowley,
"Pray, Mr. Rat, will you go with me,"
"Kind Miss. Mousey for to see?"
*Refrain
「どうか大ネズミさん、一緒に行ってくれませんか」
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「どうか大ネズミさん、一緒に行ってくれませんか」
「優しい小ネズミ嬢にお目にかかりたいんです」*4
*繰り返し

They came to the door at Mousey's hall,
Heigh ho! says Rowley,
They came to the door at Mousey's hall,
They gave a loud knock, and they gave a loud call,
*Refrain
二匹は小ネズミちゃんのお屋敷のドアまで来て*5
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
二匹は小ネズミちゃんのお屋敷のドアまで来て
やかましくノックして、やかましい呼び声をあげた
*繰り返し

"Pray, Mrs. Mouse, are you within?"
Heigho, says Rowley;
"Pray, Mrs. Mouse, are you within?"
"Oh yes, kind sirs, and I'm sitting to spin."
*Refrain
「どうか小ネズミ夫人、入れてくださいな」
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「どうか小ネズミ夫人、入れてくださいな」
「ええどうぞ、優しい殿方たち、あたくし座って糸紡ぎをしてますの」
*繰り返し

"Pray, Mrs. Mouse, now give us some beer,"
Heigh ho! says Rowley,
"Pray, Mrs. Mouse, now give us some beer,"
"That Froggy and I am fond of good cheer."
*Refrain
「小ネズミ夫人、ビールをくださいな」
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「小ネズミ夫人、ビールをくださいな」
「そうすりゃカエルくんもわしもご機嫌さ」
*繰り返し


"Pray, Mr. Frog, will you give us a song?"
Heigh ho! says Rowley,
"Pray, Mr. Frog, will you give us a song?"
"But let it be something that's not very long."
*Refrain
「ねえカエルさん、あたくしたちに歌を歌ってくださる?」
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「ねえカエルさん、あたくしたちに歌を歌ってくださる?」
「でもあまり長すぎないのにしてね」
*繰り返し

"Indeed, Mrs. Mouse," replied the Frog,
Heigh ho! says Rowley,
"Indeed, Mrs. Mouse," replied the Frog,
"A cold has made me as horse as a hog."
*Refrain
「実はですね、小ネズミ夫人」とカエルは答えた
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「実はですね、小ネズミ夫人」とカエルは答えた
「風邪をひいて馬か豚みたいな声なんですよ」
*繰り返し

"Since you have caught cold, Mr. Frog," Mousey said,
Heigh ho! says Rowley,
"Since you have caught cold, Mr. Frog," Mousey said,
"I'll sing you a song that I have just made."
*Refrain
「あなたが風邪をひいたのなら」と小ネズミが言った
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
「あなたが風邪をひいたのなら」と小ネズミが言った
「あたくしがちょうど作った歌を歌ってあげるわ」
*繰り返し

But while they were all a-merrymaking,
Heigh ho! says Rowley,
But while they were all a-merrymaking,
A Cat and her kittens came tumbling in.
*Refrain
ところがみんなで楽しくやっていたところへ
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
ところがみんなで楽しくやっていたところへ
雌猫と子猫たちが転がり込んできた
*繰り返し

The Cat she seized the Rat by the crown,
Heigh ho! says Rowley,
The Cat she seized the Rat by the crown,
The kittens they pulled the little Mouse down.
*Refrain
猫が大ネズミの脳天をひっ掴み*6
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
猫が大ネズミの脳天をひっ掴み
子猫たちは小ネズミを引き倒した

This put Mr. Frog in a terrible fright,
Heigh ho! says Rowley,
This put Mr. Frog in a terrible fright,
He took up his hat and he wished them good-night.
*Refrain
これにはカエル氏もびっくり仰天
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
これにはカエル氏もびっくり仰天
帽子を取ってごきげんよう*7
*繰り返し

As Froggy was crossing it over a brook,
Heigh ho! says Rowley,
As Froggy was crossing it over a brook,
A lilywhite Duck came and gobbled him up.
*Refrain
カエルくんが小川を渡っていると
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
カエルくんが小川を渡っていると
白百合のようなアヒルがカエルくんを飲み込んじゃった
*繰り返し

So there was an end of one, two three
Heigh ho! says Rowley,
So there was an end of one, two three
The Rat, the Mouse, and little Froggy.
*Refrain
それでおしまい、いち、に、さん
(ヘイ・ホー! ローリィと言うのさ)
それでおしまい、いち、に、さん
大ネズミも、小ネズミも、ちびカエルくんも
*繰り返し

*1 ローリィ・ポーリィはイギリスで作られるプディングの一種。ローリィ(roly)と言う名の通り、ジャムなどを巻き込んだのが特徴。ベーコンやホウレンソウなど、甘くない素材を入れて食事にすることもある。本来は茹でるか蒸すかだが、焼くこともある。ビアトリクス・ポターの「ひげのサムエルのおはなし」で、「まきだんご」という名で登場した。ただし巻き巻きされたのは子猫のトム。
 →ジャム入りローリィ・ポーリィのレシピ
 なお、ギャモン(gammon)はベーコンの一種。たわごとという意味もある。「rowley, powley, gammon, and spinach」とは、サフォーク地方の名家であったRowley家、Poley家、Bacon家、Green家のことではないかと言われている。
*2 オペラハットは折りたたみ式のシルクハット。観劇の時に折りたたんでしまえるようにしてある。
*3 ratはドブネズミやクマネズミ等の大型のネズミ、mouseはハツカネズミなどの小型のネズミを指す。
*4 小ネズミ嬢ではなく小ネズミ夫人に会いにいくバージョンもある。
*5 hallとholeを引っ掛けてる。
*6 crownは王冠ではなく頭のてっぺんのこと。seize by collarだと「襟首をひっ掴む」と言う意味になる。
*7 「I'll wish you good morning(night)」(それじゃごきげんよう)は嫌な人を追い払ったり、そそくさと立ち去る時の嫌味な決まり文句。

text & tune: 16世紀頃にスコットランドで発祥した童謡

A Frog Went A-Courting《カエルくんの求愛》とも。あまりにも長いので、歌われるときはいくつか省略されることもある。
1548年以降から文献にちらほら出ているが、今に近いテキストとメロディでかつ最も古いものは1611年にThomas Ravenscroft(1582/1592-1635)が発表した民謡集『Melismata(メリスマータ)』より。
フランスのアンジュー公フランソワが、エリザベス1世に求婚していたことを揶揄したものという説がある。しかし、この歌のモチーフの初出はそれより古く、元々はメアリー・ステュアート(後のスコットランド女王メアリー)とフランソワ2世(先天性の耳鼻咽頭系症状があり、中耳炎とアデノイド症状で残念なお方だったらしい)の婚約(1548年。それまではヘンリー8世の息子エドワード6世と婚約していたが、それをメアリーの母が破棄した)を揶揄するものだったとも考えられる。すでにあった歌が、アンジュー公の求婚を機に再浮上したものかもしれない。
イギリス人はフランス人を「カエル」と呼んで軽蔑することがある。フランスでは食用ガエル(グルヌイユ)を食べることからくる。エリザベスもフランソワに「カエル」とあだ名していた。食物連鎖や何らかの教訓を教えるような教育的な童謡ではなく、フランスをカエルに、スコットランドをネズミに例え、共倒れを示唆するブリテンの悪意に満ちた歌なのかもしれない。

Henriette Willebeek Le Mair(1889-1966)によるイラスト
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Sara Stowe
収録アルバム: Vocal Music (Children's Songs) (Jack, Jill and All Their Friends - Good Old-Fashioned Nursery Songs)


Vivien Ellis, Tim Laycock & The Broadside Band
収録アルバム: Old English Nursery Rhymes


おまけ:
19世紀に活躍したイギリスの挿絵画家Randolph Caldecott(1846-1886)による絵本。

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# by CockRobin96 | 2017-09-29 10:32 | Trackback | Comments(0)

King Henry《ヘンリー王》


Let never a man a-wooing wend
That lacketh thinges three
A store of gold, an oaken heart,
And full of charity
男は決して女を口説いてはならぬ
これら三つのものが欠けているならば
黄金の貯え、オークのように堅固な心、*1
そして溢れる慈愛

And this was seen of King Henry
Though he lay quite alone
For he's taken him to a haunted hall
Seven miles from the town
これはヘンリー王にあったこと
王は長らく独り寝の身だった
王は幽霊屋敷へ向かっていた*2
街からは7マイルも離れたところへ

He's chased the deer now him before
And the doe down by the den
Till the fattest buck in all the flock
King Henry he has slain
王は鹿の後ろを追いかけ
雌鹿を巣穴へ追い込んだ
群れの中で一番太った鴨を
ヘンリー王は討ち取った

His huntsmen followed him to the hall
To make them burly cheer
When loud the wind was heard to sound
And an earthquake rocked the floor
王の狩人達は王に従って館(やかた)へ向かい
野太い歓声をあげた
猛る風の音が聞こえたとき
地震が床を揺らした

And darkness covered all the hall
Where they sat at their meat
The grey dogs, yowling, left their food
And crept to Henry's feet
暗闇が館を覆い
皆が肉料理の前に座っているところへ
猟犬たちは遠吠えをしながら、エサも食べずに*3
ヘンリーの足にまとわりついた

And louder howled the rising wind
And burst the fastened door
And in there came a grisly ghost
Stamping on the floor
吠え猛る風がわき起こり
戸締まりしていた扉が破られた
入ってきたのは不気味な亡霊
どすんどすんと床を踏みならしながら

Her head hit the roof tree of the house
Her middle you could not span
Each frightened huntsman fled the hall
And left the King alone
女の頭は屋敷の梁にぶちあたり、
女の腹にすら男達は背が届かなかった
狩人達はみな怯えきって館から逃げ去り
王ひとりが残された

Her teeth were like the tether stakes
Her nose like club or mell
And nothing less she seemed to be
Than a fiend that comes from Hell
女の歯は縄でつないだ杭のよう
女の鼻は棍棒か木槌のよう
彼女のようなものは見たことがない
地獄から来た悪霊でもなければ

"Some meat, some meat
You King Henry, some meat you give to me
Go kill your horse, you King Henry,
And bring him here to me."
「肉だよ、肉だよ、
 ヘンリー王よ、肉をおくれ
 あんたの馬を殺せ、ヘンリー王よ
 そしてあたしに持ってくるんだよ」

He's gone and slain his berry brown steed
Though it made his heart full sore
For she's eaten up both skin and bone
Left nothing but hide and hair
王は行って一番の栗毛馬を屠った
心が嘆きでいっぱいになっても
女は薄皮も骨も平らげて
大皮とたてがみの他は残らなかった

"More meat, more meat
You King Henry, more meat you give to me
Go kill your greyhounds, King Henry,
And bring them here to me."
「もっと肉を、もっと肉を
 ヘンリー王よ、もっと肉をおくれ
 行ってあんたの猟犬を殺せ、ヘンリー王
 そしてあたしにもってくるんだよ」

And when he's slain his good greyhounds
It made his heart full sore
For she's eaten up both skin and bone
Left nothing but hide and hair
そこで王は上等の猟犬たちを屠った
心は嘆きでいっぱいになった
女は薄皮も骨も平らげて
大皮と毛の他は残らなかった

"More meat, more meat
You King Henry, more meat you give to me
Go fell your goshawks, King Henry,
And bring them here to me."
「もっと肉を、もっと肉を
 ヘンリー王よ、もっと肉をおくれ
 行ってあんたの鷹たちを降ろせ、ヘンリー王
 そしてあたしにもってくるんだよ」

And when he's slain his gay goshawks
It made his heart full sore
For she's eaten them up, both skin and bone,
Left nothing but feathers bare
そこで王は元気な鷹たちを屠った
心は嘆きでいっぱいになった
女は薄皮も骨も平らげて
わずかな羽毛の他は残らなかった

"Some drink, some drink
Now King Henry, some drink you give to me
Oh you sew up your horse's hide
And bring in a drink to me."
「飲み物だよ、飲み物だよ、
 さあヘンリー王よ、飲み物をおくれ
 馬の大皮を縫い合わせて
 それに入れた飲み物を持ってくるんだ」

And he's sewn up the bloody hide
And a pipe of wine put in
And she drank it up all in one draught,
Left never a drop therein
そこで王は血まみれの大皮を縫い合わせて
ワインを樽ごと中にあけた
女は一息でそれを飲み干し
一滴も残らなかった

"A bed, a bed now, King Henry,
A bed you'll make for me
Oh you must pull the heather green
And make it soft for me."
「寝床だ、さあ寝床だよ、ヘンリー王
 あたしのためにベッドをこしらえるんだよ
 ヘザーの若木を引っこ抜いてきて*4
 あたしのために柔らかくしなきゃいけないよ」

And pulled has he the heather green
And made for her a bed
And taken has he his gay mantle
And over it he has spread
王はヘザーの若木を引っこ抜いてきて
女のための寝床をこしらえた
きらびやかなマントをとってきて
その上を覆った

"Take off your clothes now, King Henry
And lie down by my side
Now swear, now swear, you King Henry
To take me for your bride."
「衣を脱ぐんだよ、ヘンリー王よ
 そしてあたしの隣に寝るんだよ
 誓え、誓え、ヘンリー王よ
 あたしをあんたの花嫁にすると」

"Oh God forbid," said King Henry
"That ever the like betide
That ever a fiend that comes from Hell
Should stretch down by my side."
「滅相もないことだ」とヘンリー王が言った*5
「まさかこんなことがおころうとは
 まさか地獄から来た悪霊が
 わたしの傍らで大の字になろうとは」

When the night was gone and the day was come
And the sun shone through the hall
The fairest lady that ever was seen
Lay between him and the wall
夜が去り朝が来て
太陽が館を照らした
見たこともない美しい貴婦人が
王と壁のあいだに横たわっていた

"I've met with many a gentle knight
That gave gave me such a fill
But never before with a courteous knight
That gave me all my will."
「わたくしはたくさんの優しい騎士様にお会いしました
 わたくしを満たしてくださるお方を
 でもついぞ思いやりある騎士様はいませんでした
 わたくしの思うところを与えてくださったお方は」

*1 オークはナラ、カシなどの総称。非常に頑丈であるとされ、「oaken(オーク製)」は「オークのようにたくましく頑丈」という意味を含む。英国海軍にもHeart of Oak《オークの心》という公式行進曲がある。
*2 hallは広間という意味の他、大邸宅をも指す。かつて英国の富裕層は王宮がある都市にtown house、自分の領地にcountry houseを持つのが普通だった。この場合は狩で遅くなって、幽霊屋敷に泊まる羽目になった。
*3 grey hound(dog)は灰色の犬ではなく、グレイハウンドという種の猟犬。greyは本来雌の意。すらりと細いスタイルと俊足で知られる、特権階級の象徴のような犬。
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*4 ヘザーは荒れ野(ヒース)に繁殖するギョリュウモドキなどエリカ属の野草の総称。赤紫色の花をつける。ハーブとしても使う。
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*5 直訳すると「神に呪われた」「神に禁じられたことだ」だが、「滅相もない」「そんなことあってたまるか」という意味の慣用句。

text & tune: イギリス民謡

大事なペットを全部犠牲にした結果が美女ひとりって割にあわない気がするがどうだろう。

チャイルドバラッド第32番。このヘンリー王のモデルは、百年戦争でフランスに勝利し、フランス王女キャサリン・オブ・ヴァロワと結婚してフランスをも支配したヘンリー5世とされる。(ただしふたりの息子ヘンリー6世の精神異常が原因で薔薇戦争が勃発し、王朝が断絶した)
また、スコットランドの民話「The Daughter Of King Under-Waves(海底の王の娘)」もモチーフであるとされる。
もっとも古い元ネタとしては、アイルランド神話の英雄ナイルとアイルランドの跡継ぎの姫の物語でもあろうか。
馬や猟犬たちは百年戦争で犠牲になった兵士達、呪いが解かれた貴婦人はフランスの支配権の暗喩と見ることもできる。

「Loathly lady(忌まわしい女・嫌でたまらない女)との結婚」というテーマは古くから世界中にあるが、なぜか15世紀にイギリスで流行した。類話に「The Wedding of Sir Gawain and Dame Ragnelle(ガウェイン卿とラグネル姫の結婚)」がある。カンタベリー物語の「バースの女房の話」はこのガウェイン卿の話。女性の意思を尊重することに主題が置かれているというのが非常に特異な物語でもある。
似たような話としては、日本の民話「姥皮(うばかわ)」がある。美少女が継子いじめに遭い、その美貌故にやっかいごとに巻き込まれぬようにと老婆の姿に化けられる「姥皮」を乳母からもらって放浪の旅に出る。雇われた先で、姥皮を脱いでいるときにその家の若旦那に見初められ、嫁に迎えられてめでたしめでたしとなる。でもたまたま美少女の姿を見なかったら絶対結婚してない。「鉢かづき」もこの系統だが、これは本人の信仰心により呪いが解かれる。
逆バージョンとして、男性が呪われた姿となり女性によって呪いがとける「カエルの王さま」「タニシ息子」「美女と野獣」などもある。むしろこっちの方が多い。何故だ。

Steeleye Span
収録アルバム: Below The Salt

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# by CockRobin96 | 2017-09-15 17:45 | Trackback | Comments(0)

Now We Are Six《僕らは六》

14:06から

In marble halls as white as milk
Lined with skin as soft as silk
Within a fountain crystal clear
A golden apple doth appear
No doors there are to this stronghold
Yet thieves break in and steal the gold
ミルクのように白い大理石の広間に
シルクのようにやわらかい皮を貼りめぐらせて
その中に水晶のように澄んだ泉があって
黄金のりんごが現れる
このとりでには扉もないのに
それでも泥棒が押し入って黄金を盗む

Thirty white horses on a red hill
Now they tramp
Now they champ
Now they stand still
30頭の白い馬が赤い丘にいる
今は足を踏み鳴らし、
今は噛み鳴らし、
今は静かにたたずんでいる

White bird featherless
Flew from paradise
Lit on the castle wall
Along came Lord Landless
Took it up handless
Rode away horseless
To the King's white hall
羽のない白い鳥
楽園から飛んできて
城壁に舞い降りた
領地を持たない貴族がやってきて
手もないのに鳥を捕まえ
馬もないのに乗馬して
王様の白いお城へ行った

text: いずれも古いなぞなぞをそのまま歌詞にしたもの(マザーグースとも)。答えは卵、歯、雪とそれを溶かす太陽(いずれも白い)。
tune: ?(Steeleye Spanのオリジナルか別の民謡をアレンジ?)

こういうタイトルの民謡があるわけではなく、本来は古くからあるなぞなぞをメロディに乗せたもの。ジャケットではクレジットが「St. Eleye Primary School Junior Choir」となっていたが「Steeleye」の悪ふざけ。
3番目のなぞなぞは、ドイツの民謡集「少年の魔法の角笛」にも類似のものがある。
ちなみに、タイトル自体は「くまのプーさん」で知られるA.A.ミルンの詩集から取られた(邦題は「くまのプーさんとぼく」だが、原題を訳すと「僕らは6歳」)。アルバムが第六作目であること、メンバーが当時6人であったこととかけている。

いまぼくは六つで だれにもまけないおりこうさん
だからぼくはこのままいつまでも六つでいたい
(小田島雄志・小田島若子 訳)

Steeleye Span
収録アルバム: Now We Are Six

ちなみに前曲の9:38から入ってるのは、Two Magician《ふたりの魔法使い》。
おまけ:直接は関係ないけど

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# by CockRobin96 | 2017-09-13 10:43 | Trackback | Comments(0)