Adam Lay Ybounden《アダムは囚われ横たわり》


Adam lay ybounden,
Bounden in a bond;
Four thousand winter
Thought he not to long.
アダムは囚(とら)われ横たわっていた、
縛(いまし)めのうちに囚われていた。
四千年もの冬を、*1
彼は長いとは思わなかった。

And all was for an apple,
An apple that he took,
As clerkes finden
Written in their book.
全ては一つの林檎から、
彼が手にした林檎から始まった。
書記者たちによって、
ものの本にもそう書かれている。*2

Ne had the apple taken been,
The apple take been,
Ne had never our lady
A been hevene quene.
その林檎が取られなかったら、
その林檎が食べられなかったら、
わたしたちの貴女(あなた)が、
天の女王となることもなかった。*3

Blessed be the time
That apple taken was.
Therefore we moun singen,
Deo gracias!
祝されよ、
林檎が食べられた彼の時は。
それゆえにわたしたちは歌わん、
神に感謝!と。

*1 アダムからイエスの誕生までが約四千年間であるとされている。旧約聖書創世記の「アダムが930歳で死んだ」という記述を真に受ければではあるが。
*2 聖書を指す。
*3 聖母マリアを指す。「我らの貴婦人」「天の女王」などの敬称がある。

text: 15c Anonymous
tune: Boris Ord (1897-1961)

主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。
蛇は女に言った。
「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」
女は蛇に答えた。
「わたしたちは園の木の果実を食べても良いのです。でも、園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、と神様はおっしゃいました。」
蛇は女に言った。
「決して死ぬことはない。それを食べると、目が開け、神と同じように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」
女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引きつけ、賢くなるように唆していた。
女は実を取って食べ、いっしょにいた男にも渡したので、彼も食べた。
(創世記 第3章1-6節)

中世イギリスで作られた作者不詳の詩。この曲の他、ベンジャミン・ブリテンによる合唱曲が知られている。ブリテンはより中世英語に近い歌詞を採用している。
ボリス・オードは1929年から1957年にかけて、ケンブリッジ大学のキングスカレッジでオルガン奏者及び聖歌隊指揮者をやっていた人物。この頃から普及し始めた録音や放送に熱心に関わり、特に1954年版のクリスマス礼拝の録画記録がDVDとなっている。
アダムとエバ(イブ)が口にした知恵の木の実がどのようなものであったかは聖書には記されてないが、広く林檎、あるいはいちじくであると信じられている。大航海時代以降にもたらされた柑橘類も、楽園の果実に擬せられている。下図像のエバが手にしているのも柑橘系果実である。
蛇の誘惑に負けてアダムに林檎を食べさせ、人類に死をもたらしたエバに対する、ユダヤ教徒やキリスト教徒の憎悪は並々ならぬものがあった。一方で、中世にこのような詩が存在した事は驚くべき事である。救い主をもたらした聖母マリアは、天使から献げられた「Ave」の言葉をひっくり返して「第二のエバ」とみなされる。

ヤン・ファン・アイク『ヘントの祭壇画』より『アダムとエバ』
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1954年版キングスカレッジのクリスマス礼拝


収録アルバム: A Festival of Nine Lessons and Carols


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by CockRobin96 | 2014-12-02 23:21 | Trackback | Comments(0)
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