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The Murder of the Lawson Family《ローソン家の殺人》


It was on last Christmas Evening;
A snow was on the ground.
His home in North Carolina
Where the murderer was found
His name was Charlie Lawson,
And he had a loving wife.
But we'll never know what caused him
To take his family's life.
それは去年のクリスマスの夕べのこと、
一面の雪だった。
その家はノースキャロライナにあった、
殺人事件が見つかった場所は。
彼の名はチャーリー・ローソン、
愛しい妻もいた。
だが我々には決してわからない、どうして
彼が自分の家族の命を奪ったのか。

They say he killed his wife at first,
And then the little ones did cry,
"Please, Papa, won't you spare our life?
For it is so hard to die!'
But the raging man could not be stopped;
He would not heed their call,
And he kept on firing fatal shots
Until he killed them all.
まずは妻を殺したそうだ、*1
そしておチビさんたちが叫んだそうだ。
「お願い、パパ、わたしたちがかわいくはないの?
 死ぬのはすごく怖いんだもの」
だが荒れ狂う男を止めることはできなかった、
彼は子供達の声を気にも留めず
破滅の銃弾を撃ち続けた
みんなを殺し尽くすまで。

And when the sad, sad news was heard
It was a great surprise.
He killed six children and his wife,
And then he closed their eyes.
"And now farewell, kind friends and home;
I'II see you all no more.
Into my breast I'll fire one fatal shot;
Then my troubles will be o'er."
悲しい悲しいニュースが知らされた時
これは大変な驚きだった。
彼は六人の子供たちと妻を殺して
彼らの目をつむらせた。
「さよならだ、親切だった友達に故郷よ、
 もう二度と会うことはない。
 俺の胸にこの破滅の銃弾を撃ちこんだら
 この災難もおしまいだ」

They did not carry him to jail;
No lawyers did he pay.
He'll have his trial in another world
On the final judgment day.
They were all buried in a crowded grave
While angels watched above.
"Come home, come home, my little ones.
To the land of peace and love."
みんなはチャーリーを刑務所に連れてかなかったし、
弁護士も依頼を受けなかった。
チャーリーは異世界で裁きを受けるだろうから
かの最後の審判の日に。
一家がすし詰めの墓地に埋葬される間
天使が空から見守った。
「おかえり、おかえり、おチビさんたち。
 安らぎと愛のみ国へおいで。」

*1 実際にはまず次女(12)と三女(7)、しばらく置いて妻、長女(17)、隠れようとした次男(4)と三男(2)、最後に四女(4ヶ月)の順で殺害した。チャーリーは遺体を納屋に手を組んだ状態で安置した後、自分に銃を向けて自殺した。

text & tune: アメリカ民謡。1956年に初めてレコーディングされた。

のどかなメロディとは裏腹に、非常に陰惨な歌詞を持つ不気味なバラッド。Christmas Family Tragedy《クリスマスの惨劇》とも。
1929年のクリスマスの日、ノースキャロライナでタバコ農場を営むチャーリー・ローソンが、散弾銃で妻と6人の子供達を殺害し、自殺したという実際の事件が元になっている。この際、長男(16)だけがお使いに出かけていて無事だった。特異なのは、この直前に一家は町に出かけておめかしし、家族写真を残しているということである。
事件の経過は英語版ウィキに詳しく掲載されている。経営が苦しかった説の他、チャーリーが頭に障害があり情緒不安定だったという説があるが、検視の結果は異状なし。もう一つ、長女が妊娠しており、その相手が父チャーリーだったという説もある。検死結果について書いてないからなんとも言えん。
事件の後、チャーリーの弟が家を公開してツアー客を呼び込んでいた。それってどうなの。長女がクリスマスのために焼いてたケーキなどを展示してたが、客がレーズンなどをちょろまかしていくのでガラスカバーを被せたそうな。それもどうなの。

追記:今気づいたけど、タグ:殺人バラッドの曲ってほとんどノースキャロライナの事件やんけ! ノースキャロライナにだけは絶対行かないようにするわ。

殺人バラッドや天災・大事故をテーマにしたバラッドばかり集めたアルバム。怖すぎ。
Carolina Buddies
収録アルバム: People Take Warning! Murder Ballads & Disaster Songs 1913-1938


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by CockRobin96 | 2016-03-14 21:23 | Trackback | Comments(0)

Frankie and Johnny《フランキーとジョニー》


Frankie and Johnny were sweethearts
Oh, what a couple in love
Frankie was loyal to Johnny
Just as true as the stars above
フランキーとジョニーは好き同士*1
ああ、恋に落ちた仲だった
フランキーはジョニーに誠実だった
まるで星空のように真実だった

He was her man
But he done her wrong
彼は彼女の男だったのに、
彼は彼女を裏切った

Frankie went down to the drugstore
Some ice cream she wanted to buy
The soda jerk told her that Johnny
Was making love to Nellie Bly
フランキーはドラッグストアに入っていった
アイスクリームを買いたかったから
ソーダ水の売り子が彼女に言うことには、ジョニーが
ネリー・ブライを口説いてたって*2

He was her man
But he was doing her wrong
彼は彼女の男だったのに、
彼は彼女を裏切った

Now Frankie's dad was a policeman
She stole his old forty four gun
Then back to the drugstore she beat it
Just as fast as she could run
フランキーのパパは警官だった
フランキーはパパの古びた44口径を盗み出し*3
ドラッグストアに足音高くとって返した
できる限り速く走って

After her man
Who was doing her wrong
それからどうなった
彼女を裏切った男は

Now Frankie peaked in on the party
She got a surprise when she saw
That Nellie and Johnny were making love
And sipping soda through a straw
フランキーはパーティの最中踏み込んで
ネリーを見つけてびっくり仰天
ネリーとジョニーがいちゃついてたから
ソーダ水をストローでチュウチュウやりながら

He was her man
But he was doing her wrong
彼は彼女の男だったのに、
彼は彼女を裏切った

So Frankie flew into a tantrum
She whipped out that old forty four
And her rootie toot boom, that gal did shoot
Right through that hard wood swinging door
それでフランキーはカッと逆上して
古びた44口径を抜きはなった
ルン・タン・バン!と、彼女がぶっ放したそれは*4
硬い木のスイングドアをまっすぐ貫通した

She shot her man
'Cause he was doing her wrong
彼女は男を撃った
男が彼女を裏切ったから

So bring on your crepe and your flowers
Bring on your rubber tired hack
'Cause there's eight men to go to the graveyard
But only seven are coming back
だからお前の喪章と花を持ってきておくれ*5
ゴムタイヤの四輪車も*6
だって8人の男が墓地に行って
戻ってきたのはたったの7人

She shot her man
'Cause he was doing her wrong
彼女は男を撃った
男が彼女を裏切ったから

Now this is the end of my story
And this is the end of my song
Frankie is down in the jail house
And she cries the whole night long
これで俺の話はおしまい
これで俺の歌はおしまい
フランキーは刑務所に入れられて
長い夜を泣き暮らしてる

"He was my man
But he was doing me wrong"
「彼はあたしの男だったのに
 彼はあたしを裏切った」

*1 フランキーはフランシスの愛称。フランシスは男性女性どちらにも使う名前。サイボーグ船大工ではない。
*2 アメリカで人口に膾炙したS・フォスターの曲のヒロインの名でもあり、19世紀の女性ジャーナリストの筆名でもある。黒人女性を指しているとも取れる。

*3 1950年代に開発された大口径の弾薬、44マグナム弾を使うピストルの総称。映画『ダーティ・ハリー』シリーズの主人公が愛用しているリボルバーが最もよく知られる。拳銃としてはかなりでかく、反動も強烈なので、手が小さい人には扱えない。フランキーはゴリラか何かか。
*4  rooty-toot-toot、Rum-tum-tumなどのパターンがある。いずれも弾丸の擬音およびそのものと思われる。rooting-tootingは騒々しい、賑やかな、という意味。また3発ではなく5発ぶち込んだとするバージョンもある。るんたった。
*5 crepeはcrapeとも。パンケーキの薄いのではなく、ちりめん生地の喪を示すリボン、あるいは葬儀用の服。もしかして、紙細工の花。
*6 馬車と自動車のどちらも指す。

text & tune: 1904年に初出したアメリカ民謡。

実際の殺人事件を元に作られた殺人バラッドの一つ。膨大なバリエーションがある。
1899年、当時22歳のフランキー・ベイカーという女性が、17歳の恋人アレン(またはアルバート)・ブリット少年の腹を撃ち、少年はその怪我が元で病院で死亡した。ダンス大会で少年が他の女性とタッグで優勝して帰ってきたからだという。フランキーは少年がナイフで刺そうとしてきたとして正当防衛を主張し、釈放された。
この事件を元に、フランキーというヒロインが裏切った恋人を射殺するというモチーフの歌が作られたが、彼氏の名前はアレンだったりビルだったりバージョンによってまちまちだった(フランキーのモデルの女性が1952年まで生きてたからかもしれない)。

クリスティの名作ミステリーでポワロものの一冊『ナイルに死す』では、恋人を金持ちの友人に奪われた女性が、ハネムーンにまでつきまとい、この歌を口ずさむシーンが出てくる。彼女は歌の通り元恋人を射殺しようとするが…
映画では、プレスリーによるドタバタラブコメディ『フランキー&ジョニー』、およびアル・パチーノ主演のしっとり系恋愛映画『恋のためらい フランキーとジョニー』がある。BGMとして使用され、劇中でも言及されるが、どちらもハッピーエンドで終わっている。

《フランキーとジョニー》を法廷ミステリー風に仕立てた短編アニメ
『ルーティ・トゥート・トゥート!』

UPAは近眼の頑固老人を主人公にした『がんばれマグー』シリーズで知られるアニメプロダクション。
1941年、それまでのディズニーに代表される写実的なアニメーションのあり方に対し、よりマンガちっくなアニメーションを目指したアニメーターたちがストライキを起こし、ユナイテッド・プロダクションズ・オブ・アメリカ(UPA)を設立した。この頃、アニメ需要に対し時間と人手が足りなくなっていたこともあり、極端に平面化されたマンガっぽいキャラクターデザインと、パタパタした動きのアニメが作られ、独特の味わいを生み出した。しかしUPAは赤狩りに巻き込まれた上に、テレビ時代を乗り越えることができず、粗製乱造の挙句アニメーション部門は閉鎖となった。ただし東宝と契約して「ゴジラ」シリーズのアメリカにおける所有権を獲得しており、時々新作を紹介しているらしい。

Louis Armstrong
収録アルバム: Chimes Blues



おまけ


おまけその2


おまけその3

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by CockRobin96 | 2016-03-04 20:46 | Trackback | Comments(0)

Lord Randal《レンダル卿》


'O where ha you been, Lord Randal, my son?
And where ha you been, my handsome young man?'
'I ha been at the greenwood; mother, mak my bed soon,
For I’m wearied wi hunting, and fain wad lie down.'
「どこに行っていたのだね、レンダル卿よ、息子よ、*1
 お前はどこにいたのだね、かわいい若者よ?」
「緑の森に行っていました。母上、すぐに寝床の用意を、*2
 狩りで疲れましたから、横になれば気分が良くなります。」

'An what met ye there, Lord Randal, my son?
An what met ye there, my handsome young man?'
'O I met wi my true-love; mother, mak my bed soon,
For I’m wearied wi huntin, an fain wad lie down.'
「そこで誰と会ったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 そこで誰と会ったのだね、かわいい若者よ?」
「恋人に会いました。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、横になれば気分が良くなります。」

'And what did she give you, Lord Randal, my son?
And what did she give you, my handsome young man?'
'Eels fried in a pan; mother, mak my bed soon,
For I’m wearied wi huntin, and fain wad lie down.'
「彼女はお前に何をさしあげたのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 彼女はお前に何をさしあげたのだね、かわいい若者よ?」
「鍋で揚げたウナギを。母上、すぐに寝床の用意を、*3
 狩りで疲れましたから、横になれば気分が良くなります。」

'And wha gat your leavins, Lord Randal, my son?
And wha gat your leavins, my handsom young man?'
'My hawks and my hounds; mother, mak my bed soon,
For I’m wearied wi hunting, and fain wad lie down.'
「お前の食べ残しは誰にやったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 食べ残しは誰にやったのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの鷹と猟犬たちに。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、横になれば気分が良くなります。」

'do what becam of them, Lord Randal, my son?
And what becam of them, my handsome young man?
'They stretched their legs out an died; mother, mak my bed soon,
For I’m wearied wi huntin, and fain wad lie down.'
「そのお供たちはどうなったのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 お供たちはどうなったのだね、かわいい若者よ?」
「足を突っ張らせて死にました。母上、すぐに寝床の用意を、
 狩りで疲れましたから、横になれば気分が良くなります。」

'O I fear you are poisoned, Lord Randal, my son!
I fear you are poisoned, my handsome young man!'
'O yes, I am poisoned; mother, mak my bed soon,
For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前は毒を盛られたのではないだろうね、レンダル卿よ、息子よ、
 お前は毒を盛られたのではないだろうね、かわいい若者よ!」
「さよう、毒を盛られたのです。母上、すぐに寝床の用意を、
 心臓を病んでいますから、横になれば気分が良くなります。」

'What d’ye leave to your mother, Lord Randal, my son?
What d’ye leave to your mother, my handsome young man?'
'Four and twenty milk kye; mother, mak my bed soon,
For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前はこの母に何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、*4
 この母には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「二十四頭の乳牛を。母上、すぐに寝床の用意を、
 心臓を病んでいますから、横になれば気分が良くなります。」

'What d’ye leave to your sister, Lord Randal, my son?
What d’ye leave to your sister, my handsome young man?'
'My gold and my silver; mother, mak my bed soon,
For I’m sick at the heart, an I fain wad lie down.'
「お前の妹には何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 妹には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの金と銀を。母上、すぐに寝床の用意を、
 心臓を病んでいますから、横になれば気分が良くなります。」

'What d’ye leave to your brother, Lord Randal, my son?
What d’ye leave to your brother, my handsome young man?'
'My houses and my lands; mother, mak my bed soon,
For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前の弟には何を遺してくれるのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 弟には何を遺してくれるのだね、かわいい若者よ?」
「わたしの屋敷と領地を。母上、すぐに寝床の用意を、
 心臓を病んでいますから、横になれば気分が良くなります。」

'What d’ye leave to your true-love, Lord Randal, my son?
What d’ye leave to your true-love, my handsome young man?'
'I leave her hell and fire; mother, mak my bed soon,
For I’m sick at the heart, and I fain wad lie down.'
「お前の恋人には何を遺すのだね、レンダル卿よ、息子よ、
 お前の恋人には何を遺してやるのだね、かわいい若者よ?」
「彼女には地獄と炎を。母上、すぐに寝床の用意を、
 心臓を病んでいますから、横になれば気分が良くなります。」

*1 RandalはRandolphの異形。古ノルド語で「盾+狼」を意味する。Lordは爵位を持つ男性への敬称で卿などと訳される。sirは準男爵か騎士などの下位の爵位か、単純に目上の男性への呼びかけであり、厳密に区別せねばならないが、日本だとなぜかいっしょくたにされてしまう。
*2 緑の森は、中世では人間の法が及ばない異世界、妖精の国、あるいは性的な場所とされていた。中世の騎士よろしく妖精にとらわれかけた、もしくは女郎宿に行っていたとも解釈できる。
*3 ウナギは中世ヨーロッパではポピュラーな食材だった。ウナギの血液には毒があり、生き血を飲めば中毒して下痢や吐き気などを引き起こすが、熱を通せば問題ない。ウナギのフライが生煮えだっただけかもしれないが、「蛇」とするバージョンもあり、ウナギと騙されて毒蛇を食べさせられた可能性もある。
*4 中世では、故人の持ち物をどんなにつまらないものでも残らず形見分けをするという風習があった。「遺言詩」というジャンルができるほど。嫌いな奴に嫌がらせのいやげものを押し付けることも。

text & tune: イギリスの中世の民謡

チャイルド・バラッド12番。《ロード・ランダル》《ランダル卿》とも。
毒殺と形見分けを主題とする謎めいた民謡。haveがhaになってたりmakeがmakになってるのは別に誤字ではなくて中世英語や地方の民謡にありがちないい加減なつづり。
多くのパターンがあり、主人公はロナルドであったりランサムであったりと、名前がはっきりしなかったりする。また、歴史上の人物をモデルにしているのではないかという指摘もあり、詩人ウォルター・スコットはマレー伯トーマス・ランドルフ(Thomas Randolph, Earl of Moray)の名を挙げている。
ちなみに同系統の民謡がヨーロッパ中にある。

なぜレンダルは毒を盛られたのか? その理由ははっきりしない。
毒を盛った恋人に対し「首をくくる縄を」とするパターンもある(アンドレアス・ショルなど)。

参考:魅惑の物語世界 やまなかみつよしのバラッド・トーク

(amazon版だと演奏者不明になってるけどitune版と同じ人)



アンドレアス・ショル版


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by CockRobin96 | 2015-03-28 13:22 | Trackback | Comments(0)

Child Owlet《チャイルド・オウレット(豆梟の貴公子)》

《CAUTION!! この記事には残酷な記述が含まれています》


Lady Erskine sits all in her room
sewing a silken seam
A chain of gold for Child Owlet
as he goes out and in
It fell once upon a day,
she turned to him and sweetly said
"You must cuckold your old uncle,
come into my bed ".
アースキン奥様は日がな部屋に座って*1
絹を縫い合わせておりました。
金の鎖は豆梟の君のため、*2
出たり入ったりのちび梟に。
恐るべきそのある日のこと、
奥様が豆梟の君に向かって優しくこう言いました。
「老いぼれのあなたのおじさまを出し抜いてやりましょうよ、
 わたくしのベッドへいらっしゃい。」

"Oh stop forbid Madam" he said
“How could that be done?
I wouldn't cuckold Lord Ronald
for I'm his sister's son".
She's taken out a little knife
that lay beneath the marriage bed
And stabbed below her satin dress
until the blood ran red.
「おやめくださいまし、滅相な奥様」と彼は言いました
「どうしてそんなことができましょうか、
 ロナルド卿を出し抜くなんて。
 わたしはあの方の妹の息子なのですから。」
奥方は小さなナイフを取り出して
夫婦の寝台に横たわり
サテンのドレスの下の身体に突き立てました、
血がほとばしって真っ赤になるまで。

That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。

Then in came old Lord Ronald
hearing his Lady moan.
"What blood is this upon the floor
that drips on the hearthstone?"
"Child Owlet, your sister's son,
has only just gone from my door,
If I hadn't have been a good woman
I'd have been Child Owlets whore."
そこに老ロナルド卿がやってきました、*3
奥方のうめき声を聞いて。
「床の上のこの血は何なのだ、
 暖炉の敷石にまで垂れているのは。」
「豆梟の君、あなたの妹の息子が、
 たった今わたくしの部屋から出て行きました。
 もしわたくしが貞女でなければ、
 あの子の情婦になっていたことでしょう。」

He's taken poor Child Owlet
put him in prison strong
And all his men a council held,
how they would work him wrong.
Some said they would see him hang,
some said they would see him burn
Some said they would see that young man
between wild horses torn.
ロナルド卿は哀れな豆梟の君を捕まえて
堅固な牢に押し込めました。
そして家来をみんなあつめて会議を開きました、
若者の過ちをどう償わせようかと。
ある者は吊るせと言い、
ある者は火あぶりにと言い、
ある者はこの若者を
暴れ馬に引き裂かせようと言いました。*4

That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。

"There are horses in my stable
stand can run so speedily,
And you must go to my stable
and bring out four for me."
He tied a horse to his two feet
and tied a horse to either hand
And sent them charging down the moor
as fast as they could run.
「わしの厩舎にいる馬たちは
 それはそれは素早く走ることができる。
 お前たちわしの厩舎に行き、
 四頭の馬を連れて来い。」
ロナルド卿は甥の二本の足を馬にくくりつけ
両手も馬にくくりつけました。
そして馬たちを荒野に向かって駆け下りさせました、
できる限り全速力で。

There was not a place upon the moor
nor yet a strip of ground
Not covered over with his blood
and pieces of his skin.
Not a place upon the moor,
a blade of grass or holly bush
Not covered over with his blood
and pieces of his flesh.
荒れ野の一帯が
むしり取られぬところはなく、
豆梟の君の血が覆わぬところもなく、
その皮膚のかけらが散らばらぬところもなくなりました。
荒れ野の一帯が
鋭い草の葉やひいらぎのしげみのないところはなく、
豆梟の君の血が覆わぬところもなく、
その肉のかけらが散らばらぬところもなくなりました。

That poor young man,
poor young man.
ああ哀れな若者よ、
哀れな若者よ。

*1 アースキンはスコットランド系の名字。スコットランド人は野蛮だという偏見があった。マクベス夫人ではないが、「スコットランド女はこういうこと平気でするだろう」という偏見が含まれている気がする。
*2 チャイルドは古語で「貴公子」というほどの意味。オウレットはコキンメフクロウなどの小型のフクロウ、もしくはフクロウのヒナを指す。「ちびフクロウ坊ちゃん」「雛梟の貴公子」「豆梟殿」というほどの意味になろうか。人妻に言いよられるほどの美男子のあだ名としてはなんだか変わっている。あるいは、小さくてかわいい少年の愛称だったのかもしれない。
*3 ロードは公爵以下爵位持ちの男性に対する敬称。卿と訳される事もある。ロナルドは公爵かもしれないし伯爵かもしれないが、はっきりとはわからない。
*4 馬を飼ってる国なら大概一度は思いつく、僕が考えた最強に痛い処刑法。東西を問わず、反逆罪に対する最高刑として課される。以下は解説に詳述。

text&tune: ?

チャイルド・バラッド291番。一瞬スコットランド民謡かと思ったが、スコットランドへの偏見を含んだイングランド由来の民謡かもしれない。
目上の人の妻(継母であったり、兄嫁であったり、上司の妻であったり)に言いよられ、それをはねつけたことで逆恨みされて困難に遭うというモチーフは非常に古くからあり、古代エジプトの民話『アヌプとバタ』にまでさかのぼることができる。うまくやり過ごす事もあれば、このチャイルド・オウレットのように救いのない結末に終わるパターンもある。男より強い権力を持つ女への恐怖と不信が根底にあるのかもしれない。

*4で言及した処刑法は、八つ裂き刑、四つ裂き刑、引き裂き刑などの通称がある。古今東西の記録には少なからず言及されるものの、ほとんど伝説に等しい。フランスで百数十年ぶりに実施してみたところ「四馬力程度では人体を引き裂くのは無理」という結論に達したというオチがある(そもそも4頭同時にバラバラの方向に馬を走らせるというのがとても難しい。もっとも人体に四馬力の力がかかった時点で激痛で絶命しそうだが。チャイルド・オウレットが成人男性でなく少年だったとしたら、四馬力でも可能かもしれない)。なおこの際に処刑されたのは、ルイ15世暗殺を企んだロベール=フランソワ・ダミアンであった。3頭の馬に引っ張られた1頭がコケる、そもそも引っ張ったくらいじゃ人体はちぎれないなどのアクシデントが続き、すでに死体になっていたダミアンの四肢に切れ目を入れて対応し、ようやく処刑が完了したのは4時間後であった。死刑執行人であったシャルル=アンリ・サンソンは、その時の詳細な記録を残している。補佐を担当した伯父のニコラ・シャルル=ガブリエルはあまりの凄惨な光景にショックを受け、そのまま隠居してしまった。
イギリスでは「首吊り・内蔵抉り・四つ裂き」というセットにされ、反逆罪の最高刑として行われた。ギロチンが人道的に思えるレベルのエグさなので、詳しく知りたければ勝手にwikiって下さい。この刑を受けた著名な人物としては、ガイ・フォークスがいる。国際ハッカー集団アノニマスやVフォーヴェンデッタのVが被ってるお面のモデルになった人。
命が軽いので有名な中国では「四馬力でダメなら倍にすればいいじゃない」というわけで、馬ではなく馬車を使って人体を引きちぎるという処刑法をかなり早い時期から考案している。これは「車裂き」と呼ばれる。
なお、日本では牛を使った「牛裂き」が考案され、戦国時代の見せしめやキリシタンの処刑に使われたという記録があるが、江戸時代初期くらいで消えた。



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by CockRobin96 | 2015-03-10 22:54 | Trackback | Comments(0)

Cruel Shister≪残酷な姉≫



There lived a lady by the North Sea shore
Lay the bent to the bonnie broom
Two daughters were the babes she bore
Fa la la la la la la la la la
北の海辺の地に貴婦人が住んでいて
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)*1
ふたりの娘をみごもった
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

As one grew bright as is the sun
Lay the bent to the bonnie broom
So coal black grew the elder one
Fa la la la la la la la la la
ひとりは太陽のように輝かしく育った
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
姉の方は炭のように黒く育った
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

A knight came riding to the lady's door
Lay the bent to the bonnie broom
He'd traveled far to be their wooer
Fa la la la la la la la la la
ひとりの騎士が馬に乗って貴婦人の扉までやってきた
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
彼は姉妹の求婚者となるため遠くから旅してきた
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

He courted one with gloves and rings
Lay the bent to the bonnie broom
But he loved the other above all things
Fa la la la la la la la la la
騎士は手袋と指輪でもって求婚した
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
しかし彼が何にも増して愛したのは妹だった
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

Oh, sister will you go with me
Lay the bent to the bonnie broom
To watch the ships sail on the sea?
Fa la la la la la la la la la
「妹よ、わたしといっしょにいらっしゃい」
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
「船が海をゆくのを見に行きましょうよ」
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

She took her sister by the hand
Lay the bent to the bonnie broom
And led her down to the North Sea strand
Fa la la la la la la la la la
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
姉は妹の手をひいて
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)
北の海岸まで連れて降りていった

And as they stood on the windy shore
Lay the bent to the bonnie broom
The dark girl threw her sister over
Fa la la la la la la la la la
ふたりが風の強い岸辺に立ったとき
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
邪悪な娘は妹を突き落とした
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

Sometimes she sank, sometimes she swam
Lay the bent to the bonnie broom
Crying, "Sister, reach to me your hand"
Fa la la la la la la la la la
妹は時に沈み、時にもがいた
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
「お姉さま、わたしに手を貸して」と叫びながら
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

Oh sister, sister, let me live
Lay the bent to the bonnie broom
And all that's mine I'll surely give
Fa la la la la la la la la la
「姉さま、姉さま、命は助けて」
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
「わたしのものは全てさしあげるから」
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

Your own true love that I'll have and more
Lay the bent to the bonnie broom
But thou shalt never come ashore
Fa la la la la la la la la la
あなたの大切な恋人はわたしのものになるけれど
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
お前は二度と岸に上がって来られないだろう
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

And there she floated like a swan
Lay the bent to the bonnie broom
The salt sea bore her body on
Fa la la la la la la la la la
妹は白鳥のようにただよい
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
塩辛い海が彼女の遺体を運んだ
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

Two minstrels walked along the strand
Lay the bent to the bonnie broom
And saw the maiden float to land
Fa la la la la la la la la la
ふたりの吟遊詩人が海岸沿いを歩いていると
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
おとめが陸に流れ着いているのを見つけた
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

They made a harp of her breastbone
Lay the bent to the bonnie broom
Whose sound would melt a heart of stone
Fa la la la la la la la la la
ふたりは彼女の胸骨で竪琴を作った*2
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
その響きは石の心もとろかすほど
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

They took three locks of her yellow hair
Lay the bent to the bonnie broom
And with them strung the harp so rare
Fa la la la la la la la la la
ふたりはおとめの金髪の房を取り
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
このまれなる竪琴の弦とした
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

They went into her father's hall
Lay the bent to the bonnie broom
To play the harp before them all
Fa la la la la la la la la la
ふたりはおとめの父の屋敷に入った
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
皆の前で竪琴を奏でるために
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

But when they laid it on a stone
Lay the bent to the bonnie broom
The harp began to play alone
Fa la la la la la la la la la
しかしふたりが竪琴を石の上に置くと
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
竪琴はひとりでに鳴り出した
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

The first string sang a doleful sound
Lay the bent to the bonnie broom
The bride her younger sister drowned
Fa la la la la la la la la la
最初の弦は悲しげな響きで歌った
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
「花嫁が妹を溺死させた」と
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

The second string as that they tried
Lay the bent to the bonnie broom
In terror sits the black-haired bride
Fa la la la la la la la la la
二本目の弦を奏でようとすると
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
黒髪の花嫁は恐怖のあまり座り込んだ
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

The third string sang beneath their bow
Lay the bent to the bonnie broom
And surely now her tears will flow
Fa la la la la la la la la la
三本目の弦が弓で弾かれたなら
(枯れ草を愛らしいエニシダに積もう)
花嫁の涙が今にもあふれるだろう
(ファ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ)

*1 bentは稲科の雑草、または枯れ草。エニシダは別名ほうき草。毒性があるが強心剤のもとにもなる。魔女はこれをたばねてほうきにして空を飛ぶという。
*2 胸骨は本来胸の真ん中にある肋骨があつまる平たい骨だが、単に肋骨のことかもしれない。水死体の骨で楽器作るとか頭おかCと思うだろうが、不幸な死を遂げた死者の骨が、歌うあるいは喋るなどして悪事を糾弾するというモチーフは多い。

チャイルドバラッド10番の民謡を、イギリスのフォークグループ「ペンタングル」が改変したもの。「枯れ草を愛らしいエニシダに積もう」というフレーズは示唆に富むが、実はRiddles Wisely Expounded《賢女問答》という全然無関係のバラッドからひっぱってきたというオチ。ちなみにこちらは騎士が出した謎を賢い娘が解いてみせるというもの。賢さに感じ入った騎士が娘と結婚するというオチもあれば、騎士の正体が悪魔で、正体を言い当てられ逃げて行くというオチもある。この場合はFalse Knight《偽騎士問答》とも呼ばれる。


きょうだい仲良くとはいうけれど、骨肉の争いは人類を含む全生物の創世からの命題である。他人ならつきあわなければいいだけのことだが、血縁ではそうはいかないので、思いあまって殺してしまうわけである。実際、他人による殺人より家族間での殺人の件数の方が多いという統計が出ている。また、バージョンによっては妹が姉を殺すこともある。
騎士が最初から妹だけに求婚すればいいのにと思うが、「姉より先に妹を嫁がせない」あるいは「姉妹そろって嫁ぐ」という風習は世界各地に見られる。
より原型に近いものとして《Twa Shisters》がある。
Twa Sisters(Binnorie)



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by CockRobin96 | 2014-07-24 22:46 | Trackback | Comments(0)

The Cruel Mother《残酷な母》


A minister's daughter in the north
(Hey the rose and the lindsay-o,)
She's fallen in love with her father's clerk,
(Down by the greenwood side-i-o.)
北の国にある司祭の娘がおったとさ、
(ねえ、ローズにリンゼイ)*1
彼女は父の書記と恋に落ちた。*2
(緑の森の方へ降りておいで)

He courted her for a year and a day,
(Hey the rose and the lindsay-o,)
Till her the young man did betray.
(Down by the greenwood side-i-o.)
男は年がら年中彼女を口説いた、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
彼女がこの若い男と過ちを犯すまで。
(緑の森の方へ降りておいで)

She leaned her back up against a thorn
(Hey the rose and the lindsay-o,)
And that her bonny boys she has born.
(Down by the greenwood side-i-o.)
彼女はサンザシに背をもたれかけさせて、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
そして可愛い男の子達を産み落とした。
(緑の森の方へ降りておいで)

She's taken out her little pen-knife
(Hey the rose and the lindsay-o,)
And she has twined them of their life.
(Down by the greenwood side-i-o.)
彼女は小さなペンナイフを手に取り、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
子ども達の命を断ってしまった。
(緑の森の方へ降りておいで)

She laid them beneath some marble stone
(Hey the rose and the lindsay-o,)
Thinking to go a maiden home.
(Down by the greenwood side-i-o.)
彼女は彼らをまだらの小石で覆って埋めた、*3
(ねえ、ローズにリンゼイ)
処女として家に戻ることを思いながら。
(緑の森の方へ降りておいで)

As she looked over her father's wall
(Hey the rose and the lindsay-o,)
She saw her two bonny boys playing ball.
(Down by the greenwood side-i-o.)
それから彼女が塀の向こうを見渡すと、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
二人のかわいい男の子がボール遊びしていた。
(緑の森の方へ降りておいで)

“Oh bonny boys, if you were mine
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 I would dress you in silk so fine.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「まあ、かわいい坊やたち、あなたたちが私の子だったら
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 極上の絹を着せてあげるのに。」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Oh cruel mother, when we were thine
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 We didn't see aught of your silk so fine.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「やあ、酷いお母さん、僕たちがあなたの子だったとき
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 極上の絹なんて見もしなかったよ。」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Now bonny boys, come tell to me
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 What sort of death I shall have to die?”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「ねえ、かわいい坊やたち、教えてちょうだい、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 わたしはどんな死に方をしなければならないの?」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Seven years as a fish in the flood,
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 And seven years a bird in the wood.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「七年の間は湖の魚、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 七年の間は梢の鳥となれ。」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Seven years a tongue in the warning bell,
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 And seven years in the flames of hell.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「七年の間は警鐘の叩きがねとなり、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 七年の間は地獄の炎の中さ。」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Welcome, welcome, fish in the flood,
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 And welcome, welcome, bird in the wood.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「いいわ、かまわないわ、湖の魚でも、
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 いいわ、かまわないわ、梢の鳥でも。」
(緑の森の方へ降りておいで)

“Welcome, tongue to the warning bell,
(Hey the rose and the lindsay-o,)
 But God keep me from the flames of hell.”
(Down by the greenwood side-i-o.)
「かまわないわ、警鐘の叩きがねでも。
(ねえ、ローズにリンゼイ)
 でも神よ、地獄の炎からはお救いください。」
(緑の森の方へ降りておいで)

*1 lindsayは西洋菩提樹を語源とした地名、人名、あるいは西洋菩提樹などシナノキ科の木の異称。女性をバラや菩提樹に例えて、情事へ誘うはやしことばか。あるいはヒロインを誘惑した男のセリフか。緑の森は逢い引きの場所でもあり、性的なニュアンスを含んでいる。
*2 クラーク(書記)は聖職者でなくてもなれる職業。幼子を殺したペンナイフの持ち主とも解釈できる。
*3 大理石とも。しかし大理石だとしたらどこから調達してくるのか不自然な気がする。人通りの多いところに埋めて踏み固めさせるとしても、人通りが多いところで穴掘ってたらいよいよ不自然だ。

チャイルドバラッド20番。未婚の母の子殺しを題材にした不気味な民謡。女性は司祭の娘、公爵の娘、ヨークの令嬢などさまざまなバリエーションがある。また、ただならぬ存在となった子とその母の問答というモチーフは、《さくらんぼの木のキャロル》にもあらわれる。
緑の森の方へ》は異形のひとつ。


Shirley Collins, Dolly Collins
収録アルバム: The Sweet Primroses

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by CockRobin96 | 2014-05-07 22:32 | Trackback | Comments(0)

The Maid and The Palmer《おとめと巡礼》


Oh, the maid went down to the well for to wash,
And the dew fell down from her snow-white flesh,
The dew fell down from her snow-white flesh,
As the sun shone down so early.
おとめが洗濯をしに井戸へ降りていく、
雪白の肌から汗がこぼれる
雪白の肌から汗がこぼれる
(とても朝早くに日が差すから)

And as she washed, as she wrung,
She hung them out on the hazel wand,
She hung them out on the hazel wand,
And by there came a palmer man.
おとめが洗濯したもの、しぼったものを
ハシバミのさおに吊るしてる*1
ハシバミのさおに吊るしてる、
そこへ巡礼の男がやってきた。

Oh, God speed you, Old Man, she cries,
God speed you, you pretty fair maid,
God speed you, you pretty fair maid,
As the sun shines down so early.
道中ご無事でね、おじいさん、と彼女は叫んだ*2
あなたもご無事で、かわいいきれいな娘さん
あなたもご無事で、かわいいきれいな娘さん、
(とても朝早くに日が差すから)

Have you got a cup, have you got a can?
Can you give a drink to a palmer man?
Can you give a drink to a palmer man?
As the sun shines down so early.
カップを持ってないかね、缶を持ってないかね、
この巡礼に飲み物をおくれでないかね
この巡礼に飲み物をおくれでないかね、
(とても朝早くに日が差すから)

Oh, I've no cup and I've no can,
And I cannot give a drink to a palmer man,
And I cannot give a drink to a palmer man,
As the sun shines down so early.
あら、カップもないし、缶もないわ
だから巡礼さんには飲ませるものがないの
だから巡礼さんには飲ませるものがないの、
(とても朝早くに日が差すから)

You lie, you lie, you are forsworn,
For if your true love came from Rome,
Then a cup, a can you'd find for him,
As the sun shines down so early.
嘘だね、嘘だね、誓って嘘だね
お前の最愛の人がローマから戻ってきたとしたら
カップや缶をその人のために探すはず
(とても朝早くに日が差すから)

Now, she swore by God and the good St. John.
True lover she had never a one,
True lover she had never a one,
As the sun shines down so early.
するとおとめは神と善良なる聖ヨハネに誓って言った*3
最愛の人なんていたことない
最愛の人なんていたことない
(とても朝早くに日が差すから)

You lie, you lie, you are forsworn,
For nine children you have born,
For nine children you have born,
As the sun shines down so early.
嘘だね、嘘だね、誓って嘘だね
お前は九人の子を産んだことがあるんだから
お前は九人の子を産んだことがあるんだから
(とても朝早くに日が差すから)

Oh, there's three of them lying under your bed-head,
Three of them under the hearth are laid,
Three of them under the hearth are laid,
As the sun shines down so early.
そのうちの三人はお前のベッドの頭の側の下
そのうち三人は暖炉の下に埋まってる
そのうち三人は暖炉の下に埋まってる、
(とても朝早くに日が差すから)

Three more laying on yonder green,
Count, fair maid, for that makes nine,
Count, fair maid, for that makes nine,
As the sun shines down so early.
もう三人はあそこのしげみの下
数えろ、きれいな娘さんよ、お前の九つの罪を
数えろ、きれいな娘さんよ、お前の九つの罪を、
(とても朝早くに日が差すから)

Palmer, oh, Palmer, do tell me,
Penance that you will give to me,
Penance that you will give to me,
As the sun shines down so early.
巡礼さん、巡礼さん、教えてください
悔い改めのわざをお与えください
悔い改めのわざをお与えください、
(とても朝早くに日が差すから)

Penance I will give thee none,
But seven years as a stepping stone,
But seven years as a stepping stone,
As the sun shines down so early.
そなたにできる悔い改めはこれ以外にない
七年の間踏み石となれ
七年の間踏み石となれ
(とても朝早くに日が差すから)

Seven more as a clapper to ring in the bell,
Seven to run from the apes of hell,
Seven to run from the apes of hell,
As the sun shines down so early.
もう七年は鐘を鳴らす舌(ぜつ)となれ
さらに七年は地獄の大猿たちから逃げ回れ*4
さらに七年は地獄の大猿たちから逃げ回れ
(とても朝早くに日が差すから)

Welcome, welcome stepping stone,
Welcome clapper in the bell to ring,
Welcome clapper in the bell to ring,
As the sun shines down so early.
いいわ、かまわないわ、踏み石も
鐘を鳴らす舌もかまわないわ
鐘を鳴らす舌もかまわないわ
(とても朝早くに日が差すから)

Welcome stone, welcome bell,
Christ, keep me from the apes of hell,
Christ, keep me from the apes of hell,
As the sun shines down so early.
石でもいいわ、鐘でもいいわ、
でもキリストよ、地獄の大猿たちからはお守りください、
でもキリストよ、地獄の大猿たちからはお守りください
(とても朝早くに日が差すから)

*1 いわゆるヘーゼルナッツの木。「ハシバミたくさん子だくさん」と言われるほど良く実がなるので、多産の象徴である一方で、催淫効果があるとも言われていた。身持ちの悪いおとめの本性を象徴する。
*2 God speed youは古い慣用句。「ご成功を(祈ります)!」「道中ご無事で」というほどの意味。
*3 聖ヨハネは洗礼者ヨハネと福音記者ヨハネのふたりがいる。同名つながりで両聖人セットにされることもしばしばある。『ヨハネによる福音書』の第四章に、キリストに井戸水を求められて「どうして異端の人間にそんなことを頼むのか」と答える『サマリアの女』というエピソードがある。サマリアの女は五人もの夫を持ったことがあり、今の連れ合いも正式に結婚しているわけではないということをキリストに見抜かれるが、ひるまずキリストと面と向かって対話する栄誉を得る。この歌は『サマリアの女』のアンチテーゼともとれる。
*4 これも古い慣用句からくる言葉。「They the die maids, lead apes in hell(処女のまま死んだ者は地獄で大猿を率いる)」、すなわち「オールドミスになる」。なお、apeとはmonkeyが小型で尾の長い猿を指すのに対し、尾のない大型の猿を指す。チンパンジーとか。シェイクスピア『空騒ぎ』の第二幕一場などに登場する言い回しであること、またローマを目指した巡礼が登場することから、この歌がイングランドがカトリックであった頃にまでにさかのぼれることがうかがえる。シェイクスピアでは「子供のためにあの世の道案内をするはずが、子供がいないから猿の道案内をさせられる」としているが、「類人猿は人間の女性に欲望を示す」と考えられていたこととも関連するかもしれない。現世での乱行の報いとして、来世では身を清らかに保てという意味か、あるいは地獄の鬼たちからの陵辱から逃げ回れという意味か。企画ものAVかよ!

追記:一説には「ape」は密通の暗喩で、「結婚対象にならない(既婚者など)男と婚前に密通した女が結果的に未婚になる」ことを揶揄したのではないかとも。中世では猿は「人間の出来損ない」とみなされ、「愚か」「狂う」「粗暴な男」などの象徴でもあった。男性を狂気に陥らせることを、猿を地獄に連れていく様子に例えているのかもしれない。

チャイルドバラッド21番。未婚の母の子殺しという、『残酷な母』や『緑の森の方へ』によく似たテーマの民謡。七年の倍数の数だけ罪滅ぼしをするというところも似ている。
この老いた巡礼が変わり果てた昔の恋人であったとも読めるが、このおとめの産んだ子供たちの父親についてはこの歌詞では触れていない。子供の数や父親についてはさまざまなバリエーションがあるが、伯父や兄弟や実の父の子という罪深さに拍車をかけるようなパターンが多い。
参考サイト「やまなかみつよしのバラッド・トーク」

異形にWell Below The Valley《谷底の井戸》という別メロディがあり、こちらは実在の女性専門の精神病院を題材にした映画『マグダレンの祈り』の冒頭で結婚式の歌として使われている(不道徳な性交渉をいましめる意味で歌うという風習があるらしい)。堕落した女性(未婚の母の他、レイプ被害者、極端な場合は「堕落しそうだなこいつ」と思われただけの女性まで)を収容する修道院だったが、実質は差別と虐待と重労働に苦しめられる悲惨な場所だったと言われる。


John Kirkpatrick, Martin Carthy
収録アルバム: The Complete Brass Monkey


Steeleye Span
収録アルバム: The Journey

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by CockRobin96 | 2014-05-06 15:56 | Trackback | Comments(0)

Omie Wise《オーミー・ワイズ》


Poor Omie, poor Omie,
poor little Omie Wise,
How she was deluded
by John Lewis's lies.
オーミー、オーミー、
かわいそうなオーミー・ワイズちゃん
彼女はどんな風にだまされたのか
ジョン・ルイズの嘘に

He promised to meet her
at Adams's Spring.
He bring her some money,
some other fine things.
ジョンはオーミーに約束した、
アダムズ・スプリングで逢おうと
ジョンは彼女にお金と
財産を持って来るように言いつけた

Her a fool-like, she met him
at Adams's Springs;
He brought her no money,
no other fine things.
彼女は愚かにも
アダムズ・スプリングへ逢いに行った
男は金もなく、
財産もない彼女を連れて行った

He brought her no money,
but he flattered a case,
"We will go and get married;
 it will be no disgrace."
彼女はお金もなかったが、
男は女を嬉しがらせてやった
「俺たちはこれから結婚するんだ
 恥じる事なんて何もないよ」

She jumped up behind him
and away the did go,
Till he come to the river
where deep water flow.
オーミーは小躍りしながら
彼の後を付いて行った
やがて河にたどり着いた
その河は深く水が流れていた

"John Lewis, John Lewis,
 will you tell me your mind?"
"My mind is to deown you
 and leave you behind."
「ジョン・ルイズ、ジョン・ルイズ、
 何をしようとしているの」
「俺はお前を溺れさせ、
 後に置いて行くつもりさ」

"Take pity on my infant
 and spare me my life.
 And let me live shamed-like
 if I can't be your wife."
「お腹の子に情けを、
 命ばかりは助けて
 恥かきながらでも生きていたいの、
 あなたの妻になれなくていいから」

He kicked her and he shoved her
and he slammed her around,
Then he threw her in deep water
where he knew she would drown.
男は女を蹴り落とし
いたるところを殴りつけた
そして深い水に彼女を沈めた
そこなら女がきっと溺れ死ぬだろうから

*1 オーミーは「ナオミ」の愛称。ナオミは旧約聖書ルツ記に登場する、計算高くも心優しいルツの姑に由来する名前。また名字のワイズには「賢い」という意味もある。賢さを象徴する名でありながら、男に騙され妊娠した挙げ句殺されるという皮肉。

実際にあった事件をもとにしたというマーダーバラッドのひとつ。ノースキャロライナ州のランドルフ・カウンティに住むナオミ・ワイズ(1789-1808)は、近所のジョナサン・ルイズと恋仲になるが、1808年4月に行方不明になり、アッシュボロの川岸で遺体が見つかった。ジョナサンは逮捕され投獄されたが脱獄し、再び逮捕されたが証拠不十分で無罪となる。その後1820年に病死するが、その臨終に至りナオミ殺害を告白したという。ノースキャロライナにはナオミ・ワイズのお墓が今でも残っている。
バージョンによっては、ジョン・ルイズが犯行を告白したり、ナオミの遺体が他者に発見されるといった内容の歌詞がある。妊娠した恋人の女性を殺して川に投げ込むという類型は、『オハイオ河の岸辺で』や『ノックスヴィルの娘』などさまざまな歌にある。というかそんな歌が多いなんてアメリカ怖すぎだろ。


参考文献:東理夫『アメリカは歌う』(作品社)

オハイオ河の岸辺で


ノックスヴィルの娘




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by CockRobin96 | 2014-05-05 21:52 | Trackback | Comments(0)

Poor Ellen Smith《かわいそうなエレン・スミス》


Poor Ellen Smith, how was she found?
Shot through the heart, lying cold on the ground.
Her body was mangled and all cast around,
And blood marks the spot where poor Ellen was found.
They picked up her body and carried it away,
And now she is sleeping in some lonesome old grave.
かわいそうなエレン・スミス、彼女はどんな風に見つかったの?
心臓を撃ち抜かれて、地面に冷たく横たわっていた。
その遺体は切り刻まれ、皆が探しまわった、
血のしみが点々と落ちていた場所でエレンは見つかった。
その遺体は持ち上げられて運び去られ、
今や彼女は寂しい古い墓で眠っている。

Who had the heart and who had the brain,
To shoot my little darlin' on this cold lonesome plain?
They picked up their rifles and hunted us down.
They found us a-loafing all around town.
The jury may convict me and God knows they can,
But I'll know I died as an innocent man.
どんな心、どんな考えの持ち主が、
俺の可愛い人をこんな冷たく寂しい場所で撃ち殺した?
みんなはライフルを持ち出して俺たちを追いつめた*1
みんなは俺たちが町をふらついてるのを見つけ出した
裁判は確かに俺を有罪とした、
でも俺は自分が無実の人と同じように死ぬんだとわかってる。

I've been in this prison for seven long years,
Each night I see Ellen through my bitter tears.
I got a letter yesterday, I read it today,
The flowers on her grave have all faded away.
The warden has told me that soon I'll be free,
To go to her grave 'neath that old hollow tree.
俺はこの刑務所に七年もいて、
夜毎エレンを思って苦い涙を流した。
昨日手紙をもらって今日読んだ、
エレンの墓に置いた花はみな枯れてしまったと。
看守が俺に言う事には、じきに俺は自由の身になるから
そしたら俺は古い枯れ木のそばのエレンのお墓に行くんだよと。

I'll go to her grave and I'll stay when I go.
On pretty Ellen's grave fairest flowers I'll grow,
I'm free from the walls of that prison at last,
But I'll never be free of my sins of the past.
Poor Ellen Smith, how was she found?
Shot through the heart, lying cold on the ground.
俺が彼女の墓に行ったなら、そこにとどまって
かわいいエレンのお墓に素晴らしい花を植えよう
ついに刑務所の塀から自由になったなら
でも俺がかつての罪から逃れる事は決してない。
かわいそうなエレン・スミス、彼女はどんな風に見つかったの?
心臓を撃ち抜かれて、地面に冷たく横たわっていた。

*1 ひとりではなく何故か「俺たち」になっている。

実際の事件を元にしたとされるアメリカの民謡。このような殺人事件をテーマにしたものを「マーダー(殺人)バラッド」と呼ぶ。歌い手は刑務所から出る予定であるかのように歌っているが、東理夫『アメリカは歌う』(作品社)の説では終生刑務所内であったとしている。バージョンによっては7年ではなく20年ともしている。
史実では、エレンはノースキャロライナ州のウィンストン・セイレムという町で、1893年にピーター・ドゥグラフという男によって殺害されたという。エレンとピーターは恋仲だったが、エレンがピーターの子を死産したことで精神に変調を来し、もてあましたピーターに銃殺されたと伝えられる。



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by CockRobin96 | 2014-05-04 21:22 | Trackback | Comments(0)

Greenwood sidie-o《緑の森の方へ》


There was a lady lived in York
All alee alonie
Fell in love with her father’s clerk
Down by the greenwood sidie-o
ヨークに令嬢が住んでいたとさ
(オーラリー、アローニー)*1
彼女は父の書記と恋に落ちた
(緑の森の方へ降りておいで)*2

She loved him up she loved him down
All alee alonie
Loved him till he filled her arms
Down by the greenwood sidie-o
彼女は男をすみからすみまで愛した
(オーラリー、アローニー)
男が彼女の腕に飽き足りるまで
(緑の森の方へ降りておいで)

She leaned her back against an oak
All alee alonie
First it bent and then it broke
Down by the greenwood sidie-o
女がオークの木を背にしてもたれかかると*3
(オーラリー、アローニー)
それはたわんでまっぷたつに折れた
(緑の森の方へ降りておいで)

She leaned her back against a thorn
All alee alonie
There she had two fine babes born
Down by the greenwood sidie-o
女はサンザシを背にしてもたれかかると*4
(オーラリー、アローニー)
ふたりのかわいい幼子を産み落とした
(緑の森の方へ降りておいで)

She took out her wee pen knife
All alee alonie
There she took those sweet babes’ life
Down by the greenwood sidie-o
女はペンナイフを取り上げて*5
(オーラリー、アローニー)
愛らしい幼子の命を絶ってしまった
(緑の森の方へ降りておいで)

She rubbed the blade against her shoe
All alee alonie
The more she rubbed the redder it grew
Down by the greenwood sidie-o
女は刃を靴でこすったが
(オーラリー、アローニー)
こするほどに赤さは増すばかり
(緑の森の方へ降りておいで)

She went back to her father’s hall
All alee alonie
Saw two babes a playin’ at ball
Down by the greenwood sidie-o
女が父の屋敷へ戻ると
(オーラリー、アローニー)
二人の幼子がボール遊びしているのを見た
(緑の森の方へ降りておいで)

O babes, o babes, if you were mine
All alee alonie
I’d dress you up in scarlet fine
Down by the greenwood sidie-o
赤ちゃん、赤ちゃん、もしわたしの子だったら
(オーラリー、アローニー)
素敵な真紅の服を着せてあげるのに
(緑の森の方へ降りておいで)

O mother, o mother, when we were yours
All alee alonie
Scarlet was our own heart’s blood
Down by the greenwood sidie-o
母さん、母さん、わたしたちがあなたの子だった時
(オーラリー、アローニー)
真紅だったのはわたしたちの胸の血だったよ
(緑の森の方へ降りておいで)

O babes, o babes, it’s heaven for you
All alee alonie
Mother, o mother, it’s hell for you
Down by the greenwood sidie-o
赤ちゃん、赤ちゃん、天国へ行くのね
(オーラリー、アローニー)
母さん、母さん、あなたは地獄行きだね
(緑の森の方へ降りておいで)

*1 意味不明の囃子ことば。aleeには風下、下手という意味がある。「ひとりでこっそり降りておいで」という、男のセリフとも読める。
*2 《残酷な母》と同じく、『緑の森」』は異世界の象徴。また性的なニュアンスを含む場所。
*3 堅く強く、木材として上等な木。あとどんぐりの木。樫と誤訳されるが、オークとは樫と楢の両方を含む。雷を引き寄せる聖なる木、森の王とされる。
*4 トゲを持つバラ科の木。甘く濃厚な匂いの花と、甘酸っぱい赤い実をつける。妖精にとってお気に入りの木であるとともに、多産の象徴でもあるが、裏を返すとセックスのシンボルでもある。
*5 羽ペンの先を削るためのナイフ。不実な書記の持ち物でもあったとすれば、父親も間接的に子殺しに参加したことになる。

残酷な母》の別バージョン。「残酷な母」では北国(スコットランド)の司祭の娘だったが、ここではヨークの令嬢となっている。
母親は「天国へ」と歌っているが、妖精の木の下で産み落とされ、洗礼を受ける間もなく殺された子供たちはキリスト教の加護が及ばない妖精と化しており、天国へ行けるかどうかかなり疑わしい。ヨークの令嬢の罪は婚前交渉だけではなく、子供たちを天国へ行けなくしてしまったことにあるのかもしれない。



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by CockRobin96 | 2014-04-14 22:37 | Trackback | Comments(0)