タグ:民謡 ( 31 ) タグの人気記事

King Henry《ヘンリー王》


Let never a man a-wooing wend
That lacketh thinges three
A store of gold, an oaken heart,
And full of charity
男は決して女を口説いてはならぬ
これら三つのものが欠けているならば
黄金の貯え、オークのように堅固な心、*1
そして溢れる慈愛

And this was seen of King Henry
Though he lay quite alone
For he's taken him to a haunted hall
Seven miles from the town
これはヘンリー王にあったこと
王は長らく独り寝の身だった
王は幽霊屋敷へ向かっていた*2
街からは7マイルも離れたところへ

He's chased the deer now him before
And the doe down by the den
Till the fattest buck in all the flock
King Henry he has slain
王は鹿の後ろを追いかけ
雌鹿を巣穴へ追い込んだ
群れの中で一番太った鴨を
ヘンリー王は討ち取った

His huntsmen followed him to the hall
To make them burly cheer
When loud the wind was heard to sound
And an earthquake rocked the floor
王の狩人達は王に従って館(やかた)へ向かい
野太い歓声をあげた
猛る風の音が聞こえたとき
地震が床を揺らした

And darkness covered all the hall
Where they sat at their meat
The grey dogs, yowling, left their food
And crept to Henry's feet
暗闇が館を覆い
皆が肉料理の前に座っているところへ
猟犬たちは遠吠えをしながら、エサも食べずに*3
ヘンリーの足にまとわりついた

And louder howled the rising wind
And burst the fastened door
And in there came a grisly ghost
Stamping on the floor
吠え猛る風がわき起こり
戸締まりしていた扉が破られた
入ってきたのは不気味な亡霊
どすんどすんと床を踏みならしながら

Her head hit the roof tree of the house
Her middle you could not span
Each frightened huntsman fled the hall
And left the King alone
女の頭は屋敷の梁にぶちあたり、
女の腹にすら男達は背が届かなかった
狩人達はみな怯えきって館から逃げ去り
王ひとりが残された

Her teeth were like the tether stakes
Her nose like club or mell
And nothing less she seemed to be
Than a fiend that comes from Hell
女の歯は縄でつないだ杭のよう
女の鼻は棍棒か木槌のよう
彼女のようなものは見たことがない
地獄から来た悪霊でもなければ

"Some meat, some meat
You King Henry, some meat you give to me
Go kill your horse, you King Henry,
And bring him here to me."
「肉だよ、肉だよ、
 ヘンリー王よ、肉をおくれ
 あんたの馬を殺せ、ヘンリー王よ
 そしてあたしに持ってくるんだよ」

He's gone and slain his berry brown steed
Though it made his heart full sore
For she's eaten up both skin and bone
Left nothing but hide and hair
王は行って一番の栗毛馬を屠った
心が嘆きでいっぱいになっても
女は薄皮も骨も平らげて
大皮とたてがみの他は残らなかった

"More meat, more meat
You King Henry, more meat you give to me
Go kill your greyhounds, King Henry,
And bring them here to me."
「もっと肉を、もっと肉を
 ヘンリー王よ、もっと肉をおくれ
 行ってあんたの猟犬を殺せ、ヘンリー王
 そしてあたしにもってくるんだよ」

And when he's slain his good greyhounds
It made his heart full sore
For she's eaten up both skin and bone
Left nothing but hide and hair
そこで王は上等の猟犬たちを屠った
心は嘆きでいっぱいになった
女は薄皮も骨も平らげて
大皮と毛の他は残らなかった

"More meat, more meat
You King Henry, more meat you give to me
Go fell your goshawks, King Henry,
And bring them here to me."
「もっと肉を、もっと肉を
 ヘンリー王よ、もっと肉をおくれ
 行ってあんたの鷹たちを降ろせ、ヘンリー王
 そしてあたしにもってくるんだよ」

And when he's slain his gay goshawks
It made his heart full sore
For she's eaten them up, both skin and bone,
Left nothing but feathers bare
そこで王は元気な鷹たちを屠った
心は嘆きでいっぱいになった
女は薄皮も骨も平らげて
わずかな羽毛の他は残らなかった

"Some drink, some drink
Now King Henry, some drink you give to me
Oh you sew up your horse's hide
And bring in a drink to me."
「飲み物だよ、飲み物だよ、
 さあヘンリー王よ、飲み物をおくれ
 馬の大皮を縫い合わせて
 それに入れた飲み物を持ってくるんだ」

And he's sewn up the bloody hide
And a pipe of wine put in
And she drank it up all in one draught,
Left never a drop therein
そこで王は血まみれの大皮を縫い合わせて
ワインを樽ごと中にあけた
女は一息でそれを飲み干し
一滴も残らなかった

"A bed, a bed now, King Henry,
A bed you'll make for me
Oh you must pull the heather green
And make it soft for me."
「寝床だ、さあ寝床だよ、ヘンリー王
 あたしのためにベッドをこしらえるんだよ
 ヘザーの若木を引っこ抜いてきて*4
 あたしのために柔らかくしなきゃいけないよ」

And pulled has he the heather green
And made for her a bed
And taken has he his gay mantle
And over it he has spread
王はヘザーの若木を引っこ抜いてきて
女のための寝床をこしらえた
きらびやかなマントをとってきて
その上を覆った

"Take off your clothes now, King Henry
And lie down by my side
Now swear, now swear, you King Henry
To take me for your bride."
「衣を脱ぐんだよ、ヘンリー王よ
 そしてあたしの隣に寝るんだよ
 誓え、誓え、ヘンリー王よ
 あたしをあんたの花嫁にすると」

"Oh God forbid," said King Henry
"That ever the like betide
That ever a fiend that comes from Hell
Should stretch down by my side."
「滅相もないことだ」とヘンリー王が言った*5
「まさかこんなことがおころうとは
 まさか地獄から来た悪霊が
 わたしの傍らで大の字になろうとは」

When the night was gone and the day was come
And the sun shone through the hall
The fairest lady that ever was seen
Lay between him and the wall
夜が去り朝が来て
太陽が館を照らした
見たこともない美しい貴婦人が
王と壁のあいだに横たわっていた

"I've met with many a gentle knight
That gave gave me such a fill
But never before with a courteous knight
That gave me all my will."
「わたくしはたくさんの優しい騎士様にお会いしました
 わたくしを満たしてくださるお方を
 でもついぞ思いやりある騎士様はいませんでした
 わたくしの思うところを与えてくださったお方は」

*1 オークはナラ、カシなどの総称。非常に頑丈であるとされ、「oaken(オーク製)」は「オークのようにたくましく頑丈」という意味を含む。英国海軍にもHeart of Oak《オークの心》という公式行進曲がある。
*2 hallは広間という意味の他、大邸宅をも指す。かつて英国の富裕層は王宮がある都市にtown house、自分の領地にcountry houseを持つのが普通だった。この場合は狩で遅くなって、幽霊屋敷に泊まる羽目になった。
*3 grey hound(dog)は灰色の犬ではなく、グレイハウンドという種の猟犬。greyは本来雌の意。すらりと細いスタイルと俊足で知られる、特権階級の象徴のような犬。
b0310887_20542627.jpg
*4 ヘザーは荒れ野(ヒース)に繁殖するギョリュウモドキなどエリカ属の野草の総称。赤紫色の花をつける。ハーブとしても使う。
b0310887_20561172.jpg
*5 直訳すると「神に呪われた」「神に禁じられたことだ」だが、「滅相もない」「そんなことあってたまるか」という意味の慣用句。

text & tune: イギリス民謡

大事なペットを全部犠牲にした結果が美女ひとりって割にあわない気がするがどうだろう。

チャイルドバラッド第32番。このヘンリー王のモデルは、百年戦争でフランスに勝利し、フランス王女キャサリン・オブ・ヴァロワと結婚してフランスをも支配したヘンリー5世とされる。(ただしふたりの息子ヘンリー6世の精神異常が原因で薔薇戦争が勃発し、王朝が断絶した)
また、スコットランドの民話「The Daughter Of King Under-Waves(海底の王の娘)」もモチーフであるとされる。
もっとも古い元ネタとしては、アイルランド神話の英雄ナイルとアイルランドの跡継ぎの姫の物語でもあろうか。
馬や猟犬たちは百年戦争で犠牲になった兵士達、呪いが解かれた貴婦人はフランスの支配権の暗喩と見ることもできる。

「Loathly lady(忌まわしい女・嫌でたまらない女)との結婚」というテーマは古くから世界中にあるが、なぜか15世紀にイギリスで流行した。類話に「The Wedding of Sir Gawain and Dame Ragnelle(ガウェイン卿とラグネル姫の結婚)」がある。カンタベリー物語の「バースの女房の話」はこのガウェイン卿の話。女性の意思を尊重することに主題が置かれているというのが非常に特異な物語でもある。
似たような話としては、日本の民話「姥皮(うばかわ)」がある。美少女が継子いじめに遭い、その美貌故にやっかいごとに巻き込まれぬようにと老婆の姿に化けられる「姥皮」を乳母からもらって放浪の旅に出る。雇われた先で、姥皮を脱いでいるときにその家の若旦那に見初められ、嫁に迎えられてめでたしめでたしとなる。でもたまたま美少女の姿を見なかったら絶対結婚してない。「鉢かづき」もこの系統だが、これは本人の信仰心により呪いが解かれる。
逆バージョンとして、男性が呪われた姿となり女性によって呪いがとける「カエルの王さま」「タニシ息子」「美女と野獣」などもある。むしろこっちの方が多い。何故だ。

Steeleye Span
収録アルバム: Below The Salt

[PR]
by CockRobin96 | 2017-09-15 17:45 | Trackback | Comments(0)

Finnegan's Wake《フィネガン家のお通夜(フィネガンズ・ウェイク)》


Tim Finnegan lived in Walken' Street
A gentleman Irishman mighty odd;
He seen a brogue so soft and sweet
And to rise in the world he carried the hod
ティム・フィネガンはウォーケン通りに住んでいた
紳士で、アイルランド男で、かなりの変わり者
なまりも心地よい優男(やさおとこ)*1
レンガ箱を担いで世過ぎをしていた

Tim had a sort of a tipplin' way
With a love of the liquor now he was born
To help him on with his work each day
Had a "drop of the cray-chur" every morn
ティムは飲み助といってもまあよかった
生まれてこの方酒が大好き
仕事の助けになるからと
毎朝「ウイスキーのひとしずく」をきこしめす*2

*Whack fol the da O, dance to your partner
Welt the floor, your trotters shake;
Wasn't it the truth I told you?
Lots of fun at Finnegan's wake!
*おっさんをひっぱたいて、パートナーとダンス、*3
 床を蹴飛ばし、足を振り振り
 俺のお喋りはほんとのことかな?
 フィネガン家のお通夜はお楽しみがいっぱい!*4

One mornin' Tim felt rather full
His head felt heavy which made him shake;
Fell from a ladder and he burst his skull
So they carried him home his corpse to wake
ある日ティムはしたたか飲み過ぎて
頭が重い気がしてかぶりを振ってみたら
はしごから落ちて頭蓋はめちゃめちゃ
それでみんなはお通夜のために遺体をティムの家に運び込んだ

Rolled him up in a nice clean sheet
Laid him out upon the bed;
A gallon of whiskey at his feet
A barrel of porter at his head
きれいで清潔なシーツでティムを包み
ベッドの上に寝かせてやり
足元にはウイスキー1ガロン
頭には黒ビールをひと樽*5

*Refrain
*繰り返し

His friends assembled at the wake
And Mrs. Finnegan called for lunch
First they brung in tea and cake;
Then pipes, tobacco and whiskey punch
友人一同がお通夜に集い
フィネガン夫人が昼食に招待
まずはみんなでお茶とケーキを持ち込み*6
それからパイプにタバコにウイスキーパンチ

Biddy O'Brien began to cry
"Such a nice clean corpse, did you ever see?
Tim mavournin, why did you die?"
Arragh, shut your gob said Paddy McGhee!
ビディ・オブライエンが泣き始めた*7
「こんなきれいな死体、見たことあって?
愛しいティム、どうして死んでしまったの?」*8
「あらまあ、お黙りよ」とパディ・マッギー

*Refrain
*繰り返し

Patty O'Connor took up the job
"Ah Biddy," says she, "You're wrong, I'm sure"
Biddy gave her a belt in the gob
Then left her sprawlin' on the floor
パティ・オコナーが仕事にかかった
「ああ、ビディったら」とパティ、「言い間違いよね、そうでしょ」
ビディはパティの口にベルトをぶっこみ
床に大の字にのしちゃった

Then the war did soon enrage
Woman to woman and man to man
Shillelagh-law was all the rage
And a row and a ruction soon began
それから戦いに火がついた
女は女に、男は男に、
みんなが怒鳴りあいいきりたち*9
すぐに罵りあいと喧嘩が始まった

Mickey Maloney lowered his head
And a bottle of whiskey flew at him
Missed, and fallin' on the bed
The liquor scattered over Tim!
ミッキー・マロニーが頭をかがめて
その上をウイスキー瓶が飛んでいく
それは外れてベッドに落ちて
お酒がティムにぶちまけられた!

Tim revives! See how he rises!
Timothy risin' from the bed
Sayin', "Whirl your liquor around like blazes
Thunderin' Jaysus! Do you thunk I'm dead?"
ティムが生き返った! ティムが起きてるよ!
ティモシーはベッドから起き上がって*10
言うことには、「そこら中お前らの酒でめちゃくちゃだ
とんでもねえこった! お前ら俺を死人だとでも思ってるのか!」

*Refrain
*繰り返し

*1 brogueは本来アイルランドやスコットランドで使われた頑丈な革靴。現在では穴飾りのあるオシャレ革靴。転じて、アイルランドなまり。
b0310887_20480817.jpg

*2 強い酒、特にウイスキーのことをcreatureと称し、さらになまってcray-churとも呼ぶ。
*3 恐らくは「whack for the daddy 'o」のこと。意味不明の囃し言葉。
*4 wakeは目覚める、起きているという意味だが、アイルランド地方では「通夜」「寝ずの番」を意味する(ずっとwakeしているから)。「死者が目覚める」ことにひっかけてもいる。
*5 porterは荷担ぎ人夫、転じてそのような労働者が好んで飲んでいた弱い黒ビール。
*6 brungはbringの過去形のなまり。フィネガン家の人が部屋に持ち込んだのか、友人達が自前で持ち込んだのかよくわからない。
*7 BiddyはBridget(ブリジット)の愛称だが、くちやかましいめんどり婆さんという意味もある。
*8 mavournin=my bonnie、my daringのこと。ゲール語の「mo mhuirnín」からきている。
*9 Shillelaghは本来ステッキがわりに使うコブのついた杖。Shillelagh-lawは口げんか、ののしりあいのこと。
b0310887_12164385.jpg
*10 ティムは元々ティモシーの愛称。
*11 Thundering=雷鳴が轟く音、転じて「ものすごく」という意味のスラング。 Jaysus=Jesus。英米人がよく言う「南無三!」。

text & tune: アイルランド民謡

また酒の歌か。

The Irish Rovers
収録アルバム: The Irish Rovers 50 Years - Vol. 1


おまけ

「ダブリン市民」「ユリシーズ」で知られるアイルランド人作家ジェイムズ・ジョイスの最後の小説。
死亡したが復活したティム・フィネガンを、原罪による転落からキリストの復活へ至る人類の象徴と見立て、ある一家族の物語を描くと見せかけて円環する人類の意識そのものを描こうとする一方で、神話だの言葉遊びだの当て字などを入れまくってふざけまくっているという、とっても難解な小説。
タイトルがFinnegan's WakeではなくFinnegans Wakeとなっているのは、「フィネガンたち」という意味を含んでいる。
このバージョンでは生き返ったティムはまた棺に戻される…らしい。
[PR]
by CockRobin96 | 2017-08-05 14:26 | Trackback | Comments(0)

Sliabh Geal Gcua《シュリーブ・ゲール・グクア》

youtubeはなし
BOYS AIR CHOIR
収録アルバム: BOYS AIR CHOIR

Ah! Sliabh Geal Gcua of the festivals,
'tis a-far o'er the sea I be
Sittin' sad and alone by the harbour wall,
desereted - dismal I be
'Tween me and my native homeland,
the yellow stream by my side
Oh! Sliabh Geal Gcua of the festivals,
is not my tale very sad?
ああ、祝祭の山シュリーブ・ゲール・グクアよ
わが身ははるか海の向こう
悲しくひとりぼっちで、堤防の上に座り込んでいる
見捨てられて−わたしはみじめだ
わたしと生まれ故郷の間は隔てられ
黄色く濁った海流のそばわたしは立ちすくむ
ああ、祝祭の山シュリーブ・ゲール・グクアよ
わたしの身の上話は悲しかろう?

Ah! If bat I were with my kinsfolk,
born of gentle line
When the healing rays of the sun
brightly fall from a cloudless sky
with the dew on the land nearby
Oh! Sliabh Geal Gcua, O what charity
if only it could be.
ああ、もしもわたしに身寄りがあって、
高貴な血筋に連なる生まれであったなら
太陽の癒しの光が
雲ひとつない空から輝かしくしたたるであろうに
それも恵みの露が置かれた地へと
シュリーブ・ゲール・グクアよ、なんという慈愛
あらん限り与え給え

It's my fate that I'd no learnin'
in the beautiful Gealic tougue
For to sing fine songs to ease my grief
the ocean wide I'd cross
And Sliabh Geal Gcua I'd see again
in all your splendour true.
Oh Daisy, dear, my darling are
with your hills and plains and glens
わたしがついに学び得ない定めだとしても
うるわしきゲールの言葉
悲しみを和らげる数々の良き歌を歌うための言葉がなくても
はるばる大洋を渡り
シュリーブ・ゲール・グクアに再びまみえるだろう
そのまことの輝きのただ中で
ああ雛菊の君よ、愛しい人よ*1
その丘よ、野辺よ、谷よ

To swim the mighty ocean
too weak I be, too feared beside
With the help of God I'll call on all my strength
to teach my Ireland shore
And be safe in the hills of the festivals,
the love of my heart.
果てしない大洋を泳ぐには
あまりにか弱く、そのうえ臆病なわたしだけれど、
神の助けによって力が呼び起される
わが島の岸辺に導き
祝祭の丘に無事たどり着くまで
わたしの心の恋人にたどり着くまで

*1 女性名でもあるが、かわい子ちゃんを指す言葉でもある。

text & tune: Pádraig Ó Miléadha (1877-1947)

この英訳詞はボーイズ・エアー・クワイア版のみで使用されている。原歌詞は全てアイルランド語で書かれている。Sliabhは山、Gealは輝くという意味。「輝けるグクア山」というほどの意味。グクアの意味はよくわからなかった。

アイルランド語版

[PR]
by CockRobin96 | 2017-05-07 09:17 | Trackback | Comments(0)

Jolly shepherd《陽気な羊飼い》

youtubeなかった



Jolly shepherd
陽気な羊飼いが
and upon on a hill as he sat,
丘の上に座ってる
So loud he blew his little horn
そして小さな角笛を大きく吹き鳴らし
and kept right well his gait,
ちょうどいいテンポで吹き続けた
Early in a morning
早朝でも
late in an evening
夜更けでも
And ever blew this little boy
この坊やはいつでも吹き鳴らす
so merrily piping,
それは陽気な角笛の音を
Terliter lo, terliter lo,
テッリ・テッロ
Terliter lo, terliter lo.
テッリ・テッロと。

text & tune: 17世紀頃のイギリス民謡

マイナーすぎてyoutubeにない、作者不詳の歌。輪唱(カノン)で歌われる。
なお、クリスマスとは特に関係ない。
[PR]
by CockRobin96 | 2016-12-23 10:11 | Trackback | Comments(0)

Dúlaman《デュラマン(海草)》McGlynn


A'níon mhín ó,
優しい娘や
sin anall na fir shúirí
ここへお前を口説きに男たちが来るよ
A mháithair mhín ó,
優しい母さん
cuir na roithléan go dtí mé
車を押してわたしの方にやって来るわ

*Dúlaman, dúlaman,
*海草、海草、
 dúlaman na binne buí
 黄色い崖の海草だよ*1
 Dúlaman na binne buí Gaelach
 アイルランドの黄色い崖の海草だよ
 Dúlaman, dúlaman,
 海草、海草
 dúlaman na farraige
 海で取れた海草
 Dúlaman na binne buí Gaelach
 アイルランドの黄色い崖の海草だよ

Rachaimid go Doire
デリーまで行ってきて*2
leis an dúlamán gaelach
アイルランドの海草を持って
Is ceannóimid bróga daora
そして上等の靴を買ってきてちょうだい
ar an dúlamán gaelach
アイルランドの海草で

*Refrain
*繰り返し

Bróga breaca dubha
黒い靴を履いた
ar an dúlamán gaelach
アイルランドの海草さん
Tá bearéad agus triús
ベレー帽に長ズボンの
ar an dúlamán gaelach
アイルランドの海草さん

*Refrain
*繰り返し

**Dúlaman na binne buí
 黄色い崖の海草
 Dúlaman na binne buí Gaelach
 アイルランドの黄色い崖の海草だよ
 Dúlaman na binne buí
 黄色い崖の海草
 Dúlaman na binne buí Gaelach
 アイルランドの黄色い崖の海草だよ

*Refrain
*繰り返し

**Refrain
**繰り返し

A'níon mhín ó,
優しい娘や
sin anall na fir shúirí
ここへお前を口説きに男たちが来るよ
A mháithair mhín ó,
優しい母さん
cuir na roithléan go dtí mé
車を押してわたしの方にやって来るわ

*Refrain
*繰り返し

Tá ceann buí óir
黄金(こがね)色の髪の
ar an dúlamán gaelach
アイルランドの海草さん
Tá dhá chluais mhaol
形のいい耳をした*3
ar an dúlamán gaelach
アイルランドの海草さん

*Refrain
*繰り返し

**Refrain
**繰り返し

*1 アイルランドはヨーロッパでは珍しく海草を食用にする。また、染料に粘りを出すために使われる。海草売りの行商人の口上がそのままリフレインとなっている。
*2 ロンドンデリーとも呼ばれる、アイルランドで4番目に大きい都市。
*3 英語ではblunt earsとなっている。先が丸いナイフなどをbluntという。先が丸い立ち耳の犬の耳もblunt ears。

text: アイルランド民謡
tune: Michael McGlynn(1964-) アイルランドの音楽グループ「アヌーナ」のディレクター。

「デュラマン」は海草の意。転じて、海草を集める人。アイルランドの海草でよく知られているのが、《ダウン州の輝ける星》にも言及されたゴールウェイ湾に浮かぶアラン諸島。海風はきつく、土地は痩せているどころか、岩ばかりで土がないので、海草と砂を混ぜて土を作り、畑にした。切り立った崖やケルト時代の遺跡は観光名所にもなっている。
アラン諸島のひとつ、イニシュマーン島の崖。
b0310887_211692.jpg

アラン諸島レポ

本来もう少し長く複雑な歌詞だが、マクグラン版では小洒落た格好の羽振りのいい海草行商人が、娘を口説きに来るという他愛ない歌詞となっている。

Anuna
収録アルバム: The Best of Anuna


シャンティクリア
収録アルバム: Wondrous Love - A Folk Song Collection


おまけ1

アラン諸島旅行エッセイ。

おまけ2

アラン島の生活をテーマにした古いドキュメンタリー。
[PR]
by CockRobin96 | 2016-10-16 21:26 | Trackback | Comments(3)

Joseph est bien marié《ヨセフは良き嫁をめとりぬ》


|: Joseph est bien Marié
ヨセフは良き嫁をめとりぬ、
 à la fille de Jessé. :|
エッサイの末裔(すえ)の娘を。*1
C'était chose bien nouvelle
いまだかつてなきこと、
D'être mère et pucelle.
母にしておとめなりとは。
Dieu y avait opéré:
これぞ神のみ業(わざ)、
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

|: Et quand ce fut au premier
初めにありしは
 Que Dieu voulut nous sauver :|
神が人類を救わんとする思し召し。
Il fit en terre descendre
主は地に遣わし給うた、
Son seul fils Jésus pour prendre
そのひとり子イエスを
En Marie humanité:
マリアの内に人とならしめて。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

|: Quand Joseph eut aperçu
ヨセフはうち見たり、
 Que la femme avait conçu :|
身籠(みごも)りしかの女を。
Il ne s'en contenta mie,
ヨセフは花嫁に満ち足らず、
Fâché fut contre Marie,
マリアに激しく怒りて
Et se voulut en aller:
追い遣(や)らんとせり。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

|: Mais l'ange si lui a dit:
天使のみ告げなかりせば、
 Joseph n'en aie point dépit, :|
ヨセフはいかに恨みを募らせしか。
Ta sainte femme Marie
「マリアは聖なる女、
Est grosse du fruit de vie.
 大いなる生命の果実。
Elle a conçu sans péché:
 かの女は罪なくして身籠れり」と。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

|: Les anges y sont venus
天使らは来たり、
 Voir le Rédempteur Jésus. :|
あがない主イエスを拝みぬ。
De très belle compagnie,
いともよき群れは、
Püis à haute voix jolie
大いに声を張りあげて
Gloria ils ont chanté:
「栄光あれ」と歌えり。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

|: Or prions dévôtement
今こそ心より祈れ、
 De bon coeur et humblement. :|
真心と謙遜でもて。
Que paix, joie et bonne vie
平和、歓び、善なる命の
Impêtre Dame Marie
授け主なる聖母マリア、*2
A notre nécessité:
我らの望む時にはいつにても。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き嫁をめとりぬ。

*1 エッサイは旧約聖書の英雄王ダビデの父。「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで/その根からひとつの若枝が育ち/その上に主の霊がとどまる。(イザヤ書11:1-2)」より、ユダヤ人は救世主はエッサイの血筋から現れると考えていた。新約聖書ではヨセフはエッサイの子孫、民間伝承ではマリアもやはりエッサイの子孫とされている。
*2 Impêtreはフランス語ではなくラテン語。「成し遂げる」「実現する」の意。

text & tune: 17世紀のフランス民謡

《ヨセフは良き妻をめとりぬ》とも。イギリスでキャロルと呼ばれるクリスマスの歌は、フランスでは「ノエル」(降誕)と呼ばれる。当時のフランスでは有名な歌だったようで、マルカントワーヌ・シャルパンティエのMesse de Minuit pour Noël《真夜中のミサ》のキリエ部分にこのメロディが使われている。

またジャン-フランソワ・ダンドリューなどにアレンジされてオルガン曲のバリエーションともなっている。

聖母マリアを崇敬するカトリックらしく、マリアへの賛美に重点がおかれているが、すでに身籠っているマリアに怒り狂うヨセフというCherry Tree Carol《さくらんぼの木のキャロル》と似たモチーフが使われている。フランスでは古くから寝取られ亭主(コキュ。ネットスラング風に言うとNTR)の艶笑話が人気で、民間劇などでもヨセフは漏れなく犠牲になっている。

フランス語全然できないけどグーグル翻訳でフランス語→英語で試しに訳してみました。間違ってたらコメントで教えてください。



[PR]
by CockRobin96 | 2016-08-29 21:33 | Trackback(1) | Comments(0)

Tai-Fu Tuan《太湖船》



山青水明幽靜靜(山青くして水明らかなり、幽かに静静たり)
山は青く、水はきよらかに、幽玄と静かなことよ。
湖心飄來風一陣(湖心にひるがえり来たる風一陣)
太湖の真ん中に一陣の風がぴゅうっと吹く、
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。
 
黄昏時侯人行少(黄昏の時候人少なに行く)
たそがれどき、人はまばらに行き交う、
半空月影水面揺(月影空半ばに水面揺れるなり)
月が空半ばにかかり、水面はゆらゆらと揺れる
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。
 
水草漫漫太湖岸(水草漫々たり太湖の岸)
水草がいっぱいに茂る太湖の岸辺、
漂來陣陣蘆花香(陣陣と漂い来たる蘆花の香)
あしの花の香りが絶えず漂ってくる、*1
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。

水色山光迎斜陽(水色山光斜陽を迎う)
水の色も山の輝きも夕日に照らされる、
湖面點點是(帆影湖面点々これ帆影なり)
湖面に点々としているのは小舟の帆影、
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。

*1 あし(よしとも。芦、蘆)は水辺に自生するススキに似た植物。清少納言には「見どころとてなし」とこき下ろされた(能因本にしか出てこないので、実はそんなこと言ってないという説もある)。本当にいい匂いかどうかは知らない。中国では違う植物のことなのかもしれない。

text: 慎芝
tune: 中国の民謡? 励迟(李厚襄(1916—1973)の筆名)とすることも。

サントリーの烏龍茶のCMで使われたので、知っている人は知っている。
太湖は中国江蘇省・浙江省にまたがる大きな湖。奇岩をよく産するのでも有名。汚染が進んで困っているらしい。
ようつべの訳を丸写ししたのではなく、前に訳したやつをいつの間にか使われてた。

もっと古い《太湖船》。歌詞もちょっと違う。


収録アルバム:SUNTORY OOLONG TEA CM SONG COLLECTION(CDしかない)

[PR]
by CockRobin96 | 2016-08-16 15:01 | Trackback | Comments(0)

David of the White Rock《ホワイト・ロックのデイヴィッド》


'Cariwch,' medd Dafydd, 'fy nhelyn i mi
Ceisiaf cyn marw roi ton arni hi
Codwch fy nwylo i gyrraedd y tant
Duw a'ch bendithio, fy ngweddw a'm plant.'


'Bring me my harp', was David's sad sigh,
'I would play one more tune before I die.
Help me, dear wife, put the hands to the strings,
I wish my loved ones the blessing God brings.'
「竪琴をくれ」とデイヴィッドは悲しくささやく、
「死ぬ前に今ひとたび奏でたいのだ。
わが妻よ、わが手を弦の上に置かせておくれ、
わが愛するものに神が恵み給わんことを。」

David the bard on his bed of death lies
Pale are his features and dim are his eyes
Yet all around him his glance wildly roves
Till it alights on the harp that he loves.
うたびとデイヴィッドは今や死の床につき、*1
顔色は褪せ、目はかすむ。
かつてその眼差しは自由にさまよい、
愛しい竪琴ある限り安らかであったのに。

Give me my harp,
my companion so long
Let it once more add its voice to my song
Harp of my country, dear harp of the brave
Let thy last notes hover over my grave.
竪琴をくれ、
わが友に永き別れを言おう
今一度、わたしの歌声と合わせよう。
わが故郷の竪琴よ、頼もしき友なる竪琴よ、
最後のひと音をわが墓穴の上に遊ばせておくれ。

text: John Ceiriog Hughes(1832-1887)
tune: David Owen(1712-1741)

*1 bardはウェールズの吟唱詩人大会で認められた特別な詩人のこと。または詩人の詩的な呼び方。シェークスピアのことを「エイヴォンのうたびと(the Bard of Avon)」とも称する。

原題は《Dafydd y Garreg Wen》。ウェールズ民謡とされているが、実在のハープ演奏者David Owenの作曲したメロディに、後年ウェールズ出身の詩人がその夭折を悼み詩をつけたもの。
最初のウェールズ語の歌詞は、2連目の英語の歌詞と同じ内容。


The Swingle Singers
収録アルバム: Around the World. A Folk Song Collection

[PR]
by CockRobin96 | 2016-05-15 20:04 | Trackback | Comments(0)

Tam Lin《タム・リン》


Oh, I forbid you maidens all
That wear gold in your hair
To come or go by Carterhaugh
For young Tam Lin is there
おお、わたしはお前たちに禁じよう
黄金の髪飾りをつけたおとめたちよ
カーター野に近寄ってはならぬ*1
若きタム・リンがそこにいるのだから

If you go by Carterhaugh
You must leave him a wad
Either your rings or green mantle
Or else your maidenhead
もしもカーター野まで行ったならば
お前たちは彼にありったけ差し出さねばならぬ
指輪か、緑のマントか
さもなければお前の純潔を

She's away o'er gravel green
And o'er the gravel brown
She's away to Carterhaugh
To flour herself a gown
あるおとめがくすんだ色の野原を越えて*2
くすんだ色の大地を越えて
カーター野までやってきた
上着を花で飾ろうと

She had not pulled a rosy rose
A rose but barely one
When by came this brisk young man
Says, lady let alone
おとめは色づく薔薇を摘むことはできなかった
ただ一輪の薔薇の他は
その途端に溌剌(はつらつ)とした若者がやってきて
「ご婦人よ、およしなさい」と言ったので

How dare you pull my rose, Madam?
How dare you break my tree?
How dare you come to Carter Hall
Without the leave of me?
「よくもわたしの薔薇を摘んだな、お嬢さん*3
 よくもわたしの木を折ったな、
 よくもカーターの野に来れたものだな、
 このわたしの許しもなく。」

Well may I pull the rose, she said
Well may I break the tree
For Carter Haugh it my father's
I'll ask no leave of thee
「わたくしは薔薇を摘んで良いのです」とおとめは答えた
「木も折っても良いのです、
 カーター野はわたくしの父のものなのですから
 あなたの許しなどいりませんわ」

Oh, in Carterhaugh,
ああ、カーター野で
in Carterhaugh
カーター野でのこと

He's taken her by the milk-white hand
And there he's laid her down
And there he asked no leave of her
As she lay on the ground.
男はおとめの乳白の手を取り、
その場へ横たえさせた
おとめの許しなどいらなかった
彼女を大地へ横たえさせるのに

Oh tell me, tell me, then she said
Oh tell me who art thee
My name it is Tam Lin, he said
And this is my story
「教えて、教えて」とおとめは言った
「あなたは何者なのか教えてちょうだい」
「わたしの名は、タム・リン」と男は答えた
「そしてこれがわたしの物語」

As it fell out upon a day
A-hunting I did ride
There came a wind out of the north
And pulled me betide
「ある日わたしは落馬した
 狩りで遠乗りしていた時
 そこに北からの風が吹いてきて
 わたしを引っ張ったものだから」

And drowsy, drowsy as I was
The sleep upon me fell
The Queen of Fairies she was there
And took me to herself
「そしてわたしはひどく眠くなって、
 落ちたところに眠り込んでしまったのだ
 妖精の女王がそこにいて
 わたしを連れ去ってしまった」

Oh, in Carterhaugh,
ああ、カーター野で
in Carterhaugh
カーター野でのこと

At the end of every seven years
They pay a tithe to Hell
And I'm so fair and full of flesh
I'm feared 'twill be myself
「毎年七年目ごとに
 妖精たちは地獄へ十分の一税を貢いでいる*4
 わたしは美しく肉付きも良いので、*5
 次はわたしの番ではないかと恐れているのだ」

Tonight it is good Hallowe'en
The fairy court will ride
And if you would your true love win
At Miles Cross, you must bide
「今宵は素敵な万聖節(ハロウィーン)
 妖精のお歴々も騎乗するだろう
 もしお前がまことに恋人を勝ち得たいならば
 マイルズ・クロスで待ち伏せなければならぬ」*6

Oh, in Carterhaugh,
ああ、カーター野で
in Carterhaugh
カーター野でのこと

Gloomy was the night
And eerie was the way
This lady in her green mantle
To Miles Cross she did go
夜は鬱々として
道は不気味だったが
おとめは緑のマントにくるまって
マイルズ・クロスまで出かけて行った

With the holy water in her hand
She cast the compass round
At twelve o'clock the fairy court
Came riding o'er the mound
手に持った聖水を
身の回りにぐるりと振りかけた
夜中の十二時に妖精のお歴々が
土手を越えてやってきた

First came by the black steed
And then came by the brown
Then Tam Lin on the milk-white steed
With a gold star in his crown
最初に来たのは黒い騎馬
次に来たのは茶色の
そして乳白の騎馬の上にはタム・リンがいた
金の星を冠に戴いて

She's pulled him down into her arms
And let the bridle fall
The Queen of Fairy she cried out
Young Tam Lin is away
おとめはタム・リンを腕の中に引きずり下ろし
馬具も落とした
妖精の女王は叫んだ、
「タム・リンが逃げてしまう!」

They've shaped him in her arms
Into an roaring snake
She's held him fast and feared him not
To be her lovely mate
妖精たちはおとめの腕の中のものを
吠えたける蛇へと変えた
おとめは恐れずしっかりと抱きしめた
愛しい人をもとに戻すため

They've shaped him in her arms again
Fire burning bold
She's held him fast and feared him not
Till he was iron cold
妖精たちはおとめの腕の中のものを
激しく燃え盛る炎へと変えた
おとめは恐れずしっかりと抱きしめた
冷たい鉄のかたまりになるまで

They've shaped him in her arms
To a wood black beast so wild
She's held him fast and feared him not
The father of her child
妖精たちはおとめの腕の中のものを
野生の黒い獣へと変えた
おとめは恐れずしっかりと抱きしめた
我が子の父親を*7

They've shaped him in her arms at last
Into a naked man
She's wrapped him in the green mantle
And knew that she had him won
妖精たちはおとめの腕の中のものを
素っ裸の男へと変えた
おとめは男を緑のマントでくるみ*8
とうとう男を勝ち取った

The Queen of Fairies she cried out
Young Tam Lin is away
妖精の女王は叫んだ、
「タム・リンが逃げてしまう!」

Had I known, had I known, Tam Lin
Long before, long before you came from home
Had I known, I would have taken out your heart
And put in a heart of stone
「わたくしがこのことを知っていたなら、タム・リンよ
 お前をさらうはるか前から
 知っていたなら、お前の心臓を抜き取って
 石の心臓を埋め込んでやったものを」

Had I known, had I known, Tam Lin
That a lady, a lady would steal thee
Had I known, I would have taken out your eyes
And put into a rowan tree
「わたくしがこのことを知っていたなら、タム・リンよ
 あのおとめがお前を盗んでいくことを
 知っていたなら、お前の目玉をくり抜いて*9
 ナナカマドの木を植え込んでやったものを」

Had I known, had I known, Tam Lin
That I would lose, that I would lose the day
Had I known, I would have paid my tithe to hell
Before you'd been won away
「わたくしがこのことを知っていたなら、タム・リンよ
 この日ついにお前を失うことを
 知っていたなら、お前を地獄への貢物にしてやったものを
 お前が奪い取られてしまう前に」

*1 カーター・ホーとかカーター・ホフとも呼ばれるが、haughの原義は川辺の牧草地のこと。
*2 このおとめの名はジャネットとされる。王の娘ともされる。
*3 Madamは一般的には既婚女性の尊称だが、身分ありげな未知の女性に対し、既婚未婚の区別なくこう呼びかけることもある。
*4 十分の一税とは、中世ヨーロッパの風習。教会が農産物の十分の一を現物徴収することからきている。キリスト教化以前の名残である妖精世界は、地獄に属するものなのかもしれない。妖精がしばしば人間をさらうのは、地獄への貢物に充てるためともされる。
*5 ナルシストというだけではなく、妖精は女王は別として、醜い外見のものが少なくないと考えられていた。かわいい人間の赤ちゃんをさらい、醜い妖精の子を置いていくという「取り替え子(チェンジリング)」にそのイメージを見ることができる。ティンカー・ベルなどのような可愛らしい妖精のイメージは19世紀くらいから一般的になる。あいつはピクシーだけど。
*6 リンカーンシャーにこの地名の丘があるが、原義は一里塚の役割を持った十字架あるいは十字路でもあろうか。十字路は不思議な力を持つとされ、悪魔の好む場所とされた。→《悪魔と農婦》
*7 すでにおとめが妊娠していることがわかる。バージョンの一つでは、おとめが父親に妊娠を指摘されるというのもある。
*8 緑のマントは妖精たちの目をくらます効果があると思われる。また緑は本来妖精が好む色、魔法の色である。
*9 お気に入りの騎士を奪われてしまった悔しさだけではなく、異世界を覗き見た者は視力などを奪われるという「見るなのタブー」を踏襲している。なお、禁じられると余計に見たくなるという現象を心理学ではカリギュラ効果という。

text & tune: スコットランド民謡

チャイルド・バラッド39番。チャイルドはこれを「フェアリー・バラッド」とみなし、32〜44番までをひとまとめにしている。《アリソン・グロス》《ふたりの魔法使い》もこの中に入っている。チャイルドは9つものバージョンを収録し、最も長いバージョンで59連も続く。
妖精や幽霊が出てくるバラッドというのはイギリスやスコットランドではしばしば演奏されるが、アメリカではあまり愛好されないという傾向がある。
異形と化した恋人、あるいは兄弟姉妹を苦労の末に元に戻すというモチーフは世界中に見られるが(日本にも説経節「小栗判官」、ヨーロッパの民話「カラスの王子」など)、女が男を元に戻すのは割と成功例が多いが、逆はあまり聞かない(オルフェウスなど)。女の方が意思が強いのか。
アトラスのゲーム『女神転生』シリーズに登場するので、知っている人もいるかもしれない。ロビンはやったことないけど。


Steeleye Span
収録アルバム: Tonight's The Night...Live


参考文献:バラッドの世界 (1979年)

おまけ


おまけその2

[PR]
by CockRobin96 | 2016-05-08 12:29 | Trackback | Comments(0)

My Bonnie lies over the ocean《わたしのいい人は大海原の彼方に眠る》


My Bonnie lies over the ocean
My Bonnie lies over the sea
My Bonnie lies over the ocean
Oh bring back my Bonnie to me
わたしのいい人は大海原の彼方に眠る*1
わたしのいい人は海の彼方に眠る
わたしのいい人は大海原の彼方に眠る
ああ、わたしのいい人を返してよ

*Bring back, bring back
Bring back my Bonnie to me, to me
Bring back, bring back
Bring back my Bonnie to me
*返してよ、返してよ、
わたしに、わたしに、あの人を返して
返してよ、返してよ、
わたしにあの人を返してよ

Last night as I lay on my pillow
Last night as I lay on my bed
Last night as I lay on my pillow
I dreamt that my Bonnie was there.
夕べ枕に頭を横たえていると
夕べ寝床に横たわっていると
夕べ枕に頭を横たえていると
わたしのいい人がそこにいる夢を見た*2

*Refrain
*繰返し

Blow the winds over the ocean
Blow the winds over the sea
Blow the winds over the ocean
To bring back my Bonnie to me
風よ吹き渡れ、大海原を越えて
風よ吹き渡れ、海を越えて
風よ吹き渡れ、大海原を越えて
わたしのいい人を連れ戻して

*Refrain
*繰返し

The winds have blown over the ocean
The winds have blown over the sea
The winds have blown over the ocean
And brought back my Bonnie to me
風が大海原を越えて吹き渡り
風が海を越えて吹き渡り
風が大海原を越えて吹き渡り
わたしのいい人を連れ戻した

*Refrain
*繰返し

*1 bonnie(bonny) スコットランドや北イングランドの方言で、「うるわしの」「ハンサムな」「風采のいい」など。
*2 本来は「my Bonnie was dead(わたしのいい人は死んでしまった)」となっている。子供向けのアレンジなのでやっぱ死ぬのはまずい。

text & tune: スコットランド民謡

異国の地で没した恋人への思いを歌う恋歌と見ることもできるが、スコットランド人の愛国心を隠した政治的な歌とすることもできる。ボニー(いい人)とはBonnie Prince Charlie(うるわしのチャーリー王子)と呼ばれたチャールズ・エドワード・ステュアートを指すとされる。(→《ロッホ・ローモンド》)。先だってイギリスから追い出されたジェームズ2世の孫息子チャーリーは、イギリスの王位奪還を企てイギリスに上陸したが、カローデンの戦いで大敗北を喫し、女装して追っ手を逃れ、フランスからローマに亡命した。それ以後不遇の生涯を送り、二度とイギリスに戻ることはできなかった。
カトリックの(というか自分たちに味方してくれる)王を戴くことが悲願であったスコットランド人にとって、チャーリーは実際の人物像を超えた象徴的な存在となった(実在のチャーリーは顔はいいけどあんまり有能ではなく、その上敗北後は心が折れたっぽい)。いつの日か血筋と美とカリスマを兼ね備えたスコットランド王の帰還があると信じ、この歌に託して歌ったのである。
繰り返しが多く覚えやすいので、子供の歌の鉄板ソングにもなっている。

漣健児の日本語訳で歌われる《恋人は海の彼方》


参考サイト:
古戦場カローデンのルポ
スコットランドの歴史に関連する様々なバラッド

Anuradha Javeri
収録アルバム: Nursery Rhymes: Hooplakidz, Vol. 4


ジャケットは死ぬほどダサいが編曲と声は素敵だ

おまけ

坂田靖子の短編集『村野』に、この歌を元ネタにした短編漫画が収録されている。
海難事故で死んだ美少年の幽霊につきまとわれ怯える男が、幽霊の見える友人に見てもらったら…
なんで美少年なのかというと、掲載されたのがJUNE(ジュネ)だったから。知ってる? ジュネ。
[PR]
by CockRobin96 | 2016-03-30 21:32 | Trackback | Comments(0)