Requiem《フォーレのレクイエム》Fauré

Ⅰ. Introitus et Kyrue
1. 入祭唱とキリエ

Requiem aeternam dona eis, Domine:
とこしえの安息を彼らに与え給え、主よ。
et lux perpetua luceat eis.
絶えざる光で彼らを照らし給え。

Te decet hymnus, Deus in Sion:
賛歌があなたに献げられる、シオンにいます神に、*1
et tibi reddetur votum in Jerusalem.
そして誓いがあなたに立てられる、エルサレムにて。

Exaudi orationem meam,
聞き給え、わたしの祈りを。
ad te omnis caro veniet.
すべて肉なるものはみなあなたのもとへ至る。

Kyrie eleison.
主よ、憐れみ給え。
Christe eleison.
キリストよ、憐れみ給え。
Kyrie eleison.
主よ、憐れみ給え。


*1 シオンはエルサレムにある丘。王家の城や墓があり、エルサレムの象徴、愛称になった。→Great is the Lord《主は偉大なり》


Ⅱ. Offertoire
2. 奉献唱

O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,
おお主イエス・キリスト、栄光の王よ。
libera animas defunctorum
死者の魂を解き放ち給え、
de poenis inferni,
地獄の責め苦から、
et de profundo lacu:
かの深き淵から。*1

O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,
おお主イエス・キリスト、栄光の王よ。
libera animas defunctorum
死者の魂を解き放ち給え、
de pre leonis,
獅子の口から、*2
ne absorbeat tartarus:
かれらが奈落に呑み込まれることの無いように。

O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,
おお主イエス・キリスト、栄光の王よ。
ne cadant in obscurum.
かれらが模糊(もこ)に落ちることの無いように。*3

Hostias et preces tibi Domine
いけにえと祈りを主なるあなたに、
laudis offerimus.
そして賛美を献げます。
Tu suscipe pro animabus illis,
かの魂たちを受けいれ給え、
quarum hodie memoriam facimus.
この日わたしたちが記念する魂たちを。

Fac eas Domine, de morte transire ad vitam.
彼らを、主よ、死から生へと越えさせてください。
quam olim Abrahae promisisti
かつてアブラハムと、*4
et semini ejus.
その子孫に約束されたように。

O Domine Jesu Christe, Rex gloriae,
おお主イエス・キリスト、栄光の王よ。
libera animas defunctorum
死者の魂を解き放ち給え、
de pre leonis,
獅子の口から、
ne absorbeat tartarus:
かれらが奈落に呑み込まれることの無いように。

*1 「深い淵の底から、主よ、あなたを呼びます。」(旧約詩篇130:01)
*2 旧約聖書ダニエル書の故事に由来。ユダヤ人ながら抜きん出た容姿と才能によってダレイオスに重用されたダニエルは、妬まれてライオンの洞窟に投げ込まれるが、神の加護により食べられることはなかった。
*3 obscurumは単純に暗闇という意味のほか、不明瞭、曖昧、もうろうとしているなどの意味もある。
*4 旧約聖書創世記に登場する、ユダヤ人の始祖。「主はアブラム(アブラハムの前名)に言われた。「あなたは生まれ故郷/父の家を離れて/わたしが示す地に行きなさい。 /わたしはあなたを大いなる国民にし/あなたを祝福し、あなたの名を高める/祝福の源となるように。/あなたを祝福する人をわたしは祝福し/あなたを呪う者をわたしは呪う。/地上の氏族はすべて/あなたによって祝福に入る。」(創世記12:01-03)
この歌詞の場合、地上を離れ天国へ迎えられることを示している。

奉献唱とは、司祭がパンとぶどう酒、あるいは献金などを献げる時に使われる固有式文。

Ⅲ. Sanctus
3. 聖なるかな

Sanctus, Sanctus, Sanctus
聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
Dominus Deus Sabaoth.
万軍の神なる主。
Pleni sunt caeli et terra
天地に満ち満ちる、
groria tua.
あなたの栄光は。
Hosanna in excelsis.
いと高きところにホサナ。*1

*1 本来は「我らを救い給え」を意味するヘブライ語。のちに礼拝などで気分の高揚や賛美をあらわすかけ声と化した。

旧約聖書イザヤ書(6:03)及びヨハネの黙示録(4:08)に登場する、異形の神の生き物が歌う賛歌をもとにしている。天使の大群が神の周囲を飛び交いながら歌うイメージ。
最終曲の《楽園へ》と雰囲気が似ている。


Ⅳ. Pie Jesu
4. ピエ・イエズ

Pie Jesu Domine,
慈しみ深き主イエスよ、
dona eis requiem,
彼らに安息を与え給え。
sempiternam requiem.
絶えざる安息を与え給え。

フォーレ作品のうちでも比類無い美しいメロディーで知られる。


Ⅴ. Agunus Dei
5. 神の小羊

Agnus Dei,
神の小羊、*1
qui tollis peccata mundi,
世の罪を除く方よ、
dona eis requiem.
彼らに安息を与え給え。

Agnus Dei,
神の小羊、
qui tollis peccata mundi,
世の罪を除く方よ、
dona eis requiem,
彼らに安息を与え給え、
sempiternam requiem.
絶えざる安息を。

Lux aeterna luceat eis, Domine:
とこしえの光で彼らを照らし給え。
Cum sanctis tuis in aeternum,
あなたの聖人らとともにとこしえにいさせ給え、
quia pius es.
あなたは慈しみ深い方であらせられますから。

Requiem aeternam dona eis Domine:
とこしえの安息を彼らに与え給え、主よ、
et lux perpetua luceat eis.
絶えざる光で彼らを照らし給え。

*1 イエスの呼び名のひとつ、洗礼者ヨハネがイエスを指して「見よ、世の罪を除く神の小羊だ」(新約ヨハネによる福音書1:29)と言った故事にちなむ。

Ⅵ. Libera me 
6. 我を解き放ち給え

Libera me, Domine, de morte aeterna,
わたしを解き放ち給え、主よ、とこしえの死から、
in die illa tremenda, in die illa:
かの恐るべき日、かの日には。
Quando coeli movendi sunt et terra:
天が地とともに揺れ動き、
dum veneris judicare saeculum per ignem.
あなたが炎でもってこの世を裁きに来られる時には。

Tremens factus sum ego,
わたしは震え、
et timeo,
おののきだす。
dum discunssion venerit,
来たるべき裁きの時、
atque ventura ira.
来たるべき憤怒の時には。

Dies illa, dies irae,
この日こそ、怒りの日*1
calamitatis et miseriae,
わざわいと痛みの日。
dies illa, dies magna et amara valde.
この日こそ、大いなる苦しみの日。
Requiem aeternam dona eis, Domine:
とこしえの安息を彼らに与え給え、主よ。
et lux perpetua luceat eis.
絶えざる光で彼らを照らし給え。

Libera me, Domine, de morte aeterna,
わたしを解き放ち給え、主よ、とこしえの死から、
in die illa tremenda, in die illa:
かの恐るべき日、かの日には。
Quando coeli movendi sunt et terra:
天が地とともに揺れ動き、
dum veneris judicare saeculum per ignem.
あなたが炎でもってこの世を裁きに来られる時には。

*1 『ヨハネの黙示録』などをもとにした、キリスト教における終末思想。キリストが再臨し、死者も生者も全て復活させ、裁きを行ったのちに、善人を天国に入れ永遠の命を与え、悪人を地獄に入れ永遠の責め苦を受けさせるという。
「その日は憤りの日/苦しみと悩みの日、荒廃と滅亡の日/闇と暗黒の日、雲と濃霧の日である。」(旧約ゼファニヤ書1:15)

通常Dies irae《怒りの日》として知られる部分に対応する。当時《死者のためのミサ》では必須であった《怒りの日》をあえて抜いていることで、死に対する恐怖よりむしろ安らぎを表明していると言われている。その割には歌詞が結構怖いんだが。


Ⅶ. In Paradisum
7. 楽園へ

In paradisum deducant Angeli:
天使たちがあなたを楽園へとともない、
in tuo adventu suscipiant te martyres,
殉教者らがあなたの訪れを迎える。
et perducant te
そしてあなたを導く、
in civitatem sanctam Jerusalem.
聖なる都エルサレムへ。*1
Chorus Angelorum te suscipiant,
あなたは天使たちの合唱に迎えられ、
et cum Lazaro quondam paupere
かの貧しかったラザロと共に、*2
aeternam habeas requiem.
とこしえの憩いを得るでしょう。

*1 実際の地域ではなく、『ヨハネの黙示録』に登場する概念としての「第二のエルサレム」を指す。この世のものではないユートピア、神聖な天国の都市というイメージ。
*2 ルカによる福音書16:19のたとえ話。貧しく病んだ男で、金持ちの男の残飯で食いしのいでいた。金持ちの男が死後地獄に堕ちたのに対し、彼は天国に迎えられた。

本来の死者ミサの一部ではなく、棺を埋葬する時に用いられる赦祷文。天使の羽音のようなコロコロした伴奏が美しい。

text: カトリックにおける死者のためのミサからの抜粋
tune: Gabriel Fauré(1845-1924)

ヴェルディ、モーツァルトらと合わせて三大レクイエムとも呼ばれる。レクイエムはときどき「鎮魂歌」と訳されるが、元来はその年までに逝去した全ての死者を記念する「死者の日(万霊節とも。11月2日)」に行われる礼拝のための曲。時代が下ると、次第に礼拝のためだけでなく、身内で楽しむ曲やコンサートの曲としてのレクイエムがあらわれるようになった。フォーレ自身もこの曲は「自分の楽しみのために作った」と述べている。

余談だが、万霊節の前の日は全ての聖人を記念する「万聖節」で、その前夜がいわゆるハロウィン。古くは日没後から新しい日が始まると考えられていたので、「10月31日の夜」はすでに「11月1日」であると考えた。ケルトの古い風習と合体して、「万聖節の夜は妖精や悪霊が活発になる」と考えられ、魔女やお化けの仮装をしたり、カボチャやカブをくりぬいたランタンを灯して怪異を追い払おうとした。

収録アルバム: Faure: Requiem / Messe Basse


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by CockRobin96 | 2015-11-03 14:08 | Trackback | Comments(0)
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