Finnegan's Wake《フィネガン家のお通夜(フィネガンズ・ウェイク)》


Tim Finnegan lived in Walken' Street
A gentleman Irishman mighty odd;
He seen a brogue so soft and sweet
And to rise in the world he carried the hod
ティム・フィネガンはウォーケン通りに住んでいた
紳士で、アイルランド男で、かなりの変わり者
なまりも心地よい優男(やさおとこ)*1
レンガ箱を担いで世過ぎをしていた

Tim had a sort of a tipplin' way
With a love of the liquor now he was born
To help him on with his work each day
Had a "drop of the cray-chur" every morn
ティムは飲み助といってもまあよかった
生まれてこの方酒が大好き
仕事の助けになるからと
毎朝「ウイスキーのひとしずく」をきこしめす*2

*Whack fol the da O, dance to your partner
Welt the floor, your trotters shake;
Wasn't it the truth I told you?
Lots of fun at Finnegan's wake!
*おっさんをひっぱたいて、パートナーとダンス、*3
 床を蹴飛ばし、足を振り振り
 俺のお喋りはほんとのことかな?
 フィネガン家のお通夜はお楽しみがいっぱい!*4

One mornin' Tim felt rather full
His head felt heavy which made him shake;
Fell from a ladder and he burst his skull
So they carried him home his corpse to wake
ある日ティムはしたたか飲み過ぎて
頭が重い気がしてかぶりを振ってみたら
はしごから落ちて頭蓋はめちゃめちゃ
それでみんなはお通夜のために遺体をティムの家に運び込んだ

Rolled him up in a nice clean sheet
Laid him out upon the bed;
A gallon of whiskey at his feet
A barrel of porter at his head
きれいで清潔なシーツでティムを包み
ベッドの上に寝かせてやり
足元にはウイスキー1ガロン
頭には黒ビールをひと樽*5

*Refrain
*繰り返し

His friends assembled at the wake
And Mrs. Finnegan called for lunch
First they brung in tea and cake;
Then pipes, tobacco and whiskey punch
友人一同がお通夜に集い
フィネガン夫人が昼食に招待
まずはみんなでお茶とケーキを持ち込み*6
それからパイプにタバコにウイスキーパンチ

Biddy O'Brien began to cry
"Such a nice clean corpse, did you ever see?
Tim mavournin, why did you die?"
Arragh, shut your gob said Paddy McGhee!
ビディ・オブライエンが泣き始めた*7
「こんなきれいな死体、見たことあって?
愛しいティム、どうして死んでしまったの?」*8
「あらまあ、お黙りよ」とパディ・マッギー

*Refrain
*繰り返し

Patty O'Connor took up the job
"Ah Biddy," says she, "You're wrong, I'm sure"
Biddy gave her a belt in the gob
Then left her sprawlin' on the floor
パティ・オコナーが仕事にかかった
「ああ、ビディったら」とパティ、「言い間違いよね、そうでしょ」
ビディはパティの口にベルトをぶっこみ
床に大の字にのしちゃった

Then the war did soon enrage
Woman to woman and man to man
Shillelagh-law was all the rage
And a row and a ruction soon began
それから戦いに火がついた
女は女に、男は男に、
みんなが怒鳴りあいいきりたち*9
すぐに罵りあいと喧嘩が始まった

Mickey Maloney lowered his head
And a bottle of whiskey flew at him
Missed, and fallin' on the bed
The liquor scattered over Tim!
ミッキー・マロニーが頭をかがめて
その上をウイスキー瓶が飛んでいく
それは外れてベッドに落ちて
お酒がティムにぶちまけられた!

Tim revives! See how he rises!
Timothy risin' from the bed
Sayin', "Whirl your liquor around like blazes
Thunderin' Jaysus! Do you thunk I'm dead?"
ティムが生き返った! ティムが起きてるよ!
ティモシーはベッドから起き上がって*10
言うことには、「そこら中お前らの酒でめちゃくちゃだ
とんでもねえこった! お前ら俺を死人だとでも思ってるのか!」

*Refrain
*繰り返し

*1 brogueは本来アイルランドやスコットランドで使われた頑丈な革靴。現在では穴飾りのあるオシャレ革靴。転じて、アイルランドなまり。
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*2 強い酒、特にウイスキーのことをcreatureと称し、さらになまってcray-churとも呼ぶ。
*3 恐らくは「whack for the daddy 'o」のこと。意味不明の囃し言葉。
*4 wakeは目覚める、起きているという意味だが、アイルランド地方では「通夜」「寝ずの番」を意味する(ずっとwakeしているから)。「死者が目覚める」ことにひっかけてもいる。
*5 porterは荷担ぎ人夫、転じてそのような労働者が好んで飲んでいた弱い黒ビール。
*6 brungはbringの過去形のなまり。フィネガン家の人が部屋に持ち込んだのか、友人達が自前で持ち込んだのかよくわからない。
*7 BiddyはBridget(ブリジット)の愛称だが、くちやかましいめんどり婆さんという意味もある。
*8 mavournin=my bonnie、my daringのこと。ゲール語の「mo mhuirnín」からきている。
*9 Shillelaghは本来ステッキがわりに使うコブのついた杖。Shillelagh-lawは口げんか、ののしりあいのこと。
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*10 ティムは元々ティモシーの愛称。
*11 Thundering=雷鳴が轟く音、転じて「ものすごく」という意味のスラング。 Jaysus=Jesus。英米人がよく言う「南無三!」。

text & tune: アイルランド民謡

また酒の歌か。

The Irish Rovers
収録アルバム: The Irish Rovers 50 Years - Vol. 1


おまけ

「ダブリン市民」「ユリシーズ」で知られるアイルランド人作家ジェイムズ・ジョイスの最後の小説。
死亡したが復活したティム・フィネガンを、原罪による転落からキリストの復活へ至る人類の象徴と見立て、ある一家族の物語を描くと見せかけて円環する人類の意識そのものを描こうとする一方で、神話だの言葉遊びだの当て字などを入れまくってふざけまくっているという、とっても難解な小説。
タイトルがFinnegan's WakeではなくFinnegans Wakeとなっているのは、「フィネガンたち」という意味を含んでいる。
このバージョンでは生き返ったティムはまた棺に戻される…らしい。
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by CockRobin96 | 2017-08-05 14:26 | Trackback | Comments(0)
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