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Joseph est bien marié《ヨセフは良き妻をめとりぬ》


|: Joseph est bien Marié
ヨセフは良き妻をめとりぬ、
 à la fille de Jessé. :|
エッサイの末裔(すえ)の娘を。*1
C'était chose bien nouvelle
いまだかつてなきこと、
D'être mère et pucelle.
母にしておとめなりとは。
Dieu y avait opéré:
これぞ神のみ業(わざ)、
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

|: Et quand ce fut au premier
初めにありしは
 Que Dieu voulut nous sauver :|
神が人類を救わんとする思し召し。
Il fit en terre descendre
主は地に遣わし給うた、
Son seul fils Jésus pour prendre
そのひとり子イエスを
En Marie humanité:
マリアの内に人とならしめて。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

|: Quand Joseph eut aperçu
ヨセフはうち見たり、
 Que la femme avait conçu :|
身籠(みごも)りしかの女を。
Il ne s'en contenta mie,
ヨセフは花嫁に満ち足らず、
Fâché fut contre Marie,
マリアに激しく怒りて
Et se voulut en aller:
追い遣(や)らんとせり。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

|: Mais l'ange si lui a dit:
天使のみ告げなかりせば、
 Joseph n'en aie point dépit, :|
ヨセフはいかに恨みを募らせしか。
Ta sainte femme Marie
「マリアは聖なる女、
Est grosse du fruit de vie.
 大いなる生命の果実。
Elle a conçu sans péché:
 かの女は罪なくして身籠れり」と。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

|: Les anges y sont venus
天使らは来たり、
 Voir le Rédempteur Jésus. :|
あがない主イエスを拝みぬ。
De très belle compagnie,
いともよき群れは、
Püis à haute voix jolie
大いに声を張りあげて
Gloria ils ont chanté:
「栄光あれ」と歌えり。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

|: Or prions dévôtement
今こそ心より祈れ、
 De bon coeur et humblement. :|
真心と謙遜でもて。
Que paix, joie et bonne vie
平和、歓び、善なる命の
Impêtre Dame Marie
授け主なる聖母マリア、*2
A notre nécessité:
我らの望む時にはいつにても。
Joseph est bien marié.
ヨセフは良き妻をめとりぬ。

*1 エッサイは旧約聖書の英雄王ダビデの父。「エッサイの株からひとつの芽が萌えいで/その根からひとつの若枝が育ち/その上に主の霊がとどまる。(イザヤ書11:1-2)」より、ユダヤ人は救世主はエッサイの血筋から現れると考えていた。新約聖書ではヨセフはエッサイの子孫、民間伝承ではマリアもやはりエッサイの子孫とされている。
*2 Impêtreはフランス語ではなくラテン語。「成し遂げる」「実現する」の意。

text & tune: 17世紀のフランス民謡

《ヨセフは良き嫁をめとりぬ》とも。イギリスでキャロルと呼ばれるクリスマスの歌は、フランスでは「ノエル」(降誕)と呼ばれる。当時のフランスでは有名な歌だったようで、マルカントワーヌ・シャルパンティエのMesse de Minuit pour Noël《真夜中のミサ》のキリエ部分にこのメロディが使われている。

またジャン-フランソワ・ダンドリューなどにアレンジされてオルガン曲のバリエーションともなっている。

聖母マリアを崇敬するカトリックらしく、マリアへの賛美に重点がおかれているが、すでに身籠っているマリアに怒り狂うヨセフというCherry Tree Carol《さくらんぼの木のキャロル》と似たモチーフが使われている。フランスでは古くから寝取られ亭主(コキュ。ネットスラング風に言うとNTR)の艶笑話が人気で、民間劇などでもヨセフは漏れなく犠牲になっている。

フランス語全然できないけどグーグル翻訳でフランス語→英語で試しに訳してみました。間違ってたらコメントで教えてください。



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by CockRobin96 | 2016-08-29 21:33 | Trackback(1) | Comments(0)

O salutaris Hostia《おお救いの犠牲よ》Saint-Saëns


youtubeなかった

O salutaris Hostia,
おお、救いの犠牲(いけにえ)よ、*1
Quæ cæli pandis ostium:
天国への扉を開くものよ。

Bella premunt
攻め寄せて来ます
hostilia,
仇なす者らが

Da robur
我らに力を与え、
fer auxilium.
助けをもたらし給え。

Amen.
アーメン。

*1 キリストは屠殺され神へ捧げられる子羊に例えられる。→Victimae Paschali《我らの過越》
*2 イザヤ書22:22及びヨハネの黙示録2:7より、キリストは「ダビデの鍵」とも呼ばれる。

text: トマス・アクィナスによる聖餐式のための賛歌
tune: Charles Camille Saint-Saëns(1835-1921)

Messe solennelle《荘厳ミサ(ミサ・ソレムニス)》Op.4の中の一曲。
サン=サーンスは日本では《動物の謝肉祭》で有名な作曲家としてしか知られていないが、実はモーツァルトと並び称される早熟型の天才音楽家。2歳でピアノを弾き、3歳で作曲し、長じてはオルガニストとなった。また詩、天文学、絵画もこなす魯山人タイプのマルチプレーヤーで、嫌な奴でもあった。スイスのピアニストであったコルトーに向かって「へー君程度でもピアニストになれるの(嘲笑)」と煽ったという逸話がある。フランス音楽の普及に努め、フランクフォーレらと共に国民音楽協会を設立した。

単品じゃなくてSanctus & Benedictusと抱き合わせでソワール
Donald Hunt and Paul Trepte and Roy Massey and Worcester Cathedral Choir
収録アルバム: The World Of English Cathedrals

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by CockRobin96 | 2016-08-29 20:46 | Trackback | Comments(0)

An­gelus ad Vir­ginem《天使がおとめのもとに》

Stephen Cleobury版

アカペラ版

An­gelus ad vir­ginem
天使がおとめのもとに
Sub ­intrans in con­clave,
部屋の中におとずれた*1
Vir­ginis for­midinem
おとめが怖がったので
De­mul­cens, in­quit, 'Ave!
天使はなだめながら「おめでとう」と言った

Ave, re­gina vir­ginum;
「おめでとう、おとめにして女王よ、
Coeli ter­rae que Dominum
 天と地の主であるお方を
Con­cip­ies, Et pa­ries, In­tac­ta,
 処女でありながら身ごもり、宿しておられるのですから
Salutem hominum;
 人々の救いをもたらすために。
Tu porta coeli facta,
 あなたこそ天の門、*2
Medella criminum'
 罪人を癒すお方です」

'Quomodo conciperem
「どうして身ごもることができましょうか、
Quae virum non cognovi?
 男の人も知りませんのに?
Qualiter infringerem
 どうして罪を犯せましょうか、
Quod firma menti vovi?'
 心がけを確かにしておりますのに?」

'Spiritus Sancti gratia
「聖霊のみ恵みが
Perficiet haec omnia;
 全てをもたらしたのです。
Ne timeas, Sed gaudeas, Secura
 でも怯えないで、むしろ 安心して喜んでください
Quod castimonia
 あなたの貞節が
Manebit in te pura
 清らかなままであることを
Dei potentia.'
 これこそ神の力なのです」

Ad haec virgo nobilis
この高貴なおとめは
Respondens inquit ei:
天使にこう答えた
'Ancilla sum humilis
「わたしはいやしいしもべ
Omnipotentis Dei.
 全能の神に仕えるものです」

Tibi coelesti nuntio,
「天から遣わされた先触れよ、
Tanti secreti conscio,
 なんと大いなる秘蹟でしょう
Consentiens, Et cupiens Videre
 主がわたしを認め、望まれ、顧みられるとは
Factum quod audio;
 それをわたしが耳にするとは
Parata sum parere
 従う覚悟はありますわ
Dei consilio.'
 神の思し召しに」

Eia mater Domini,
ああ、主の御母よ
Quae pacem reddidisti
あなたは安らぎを取り戻させてくださる
Angelis et homini,
天使らにも人々にも
Cum Christum genuisti;
それもキリストが生まれ給うた時から

Tuum exora filium
 どうかあなたの御子に嘆願し
Ut se nobis propitium
 我らをとりなしてください
Exhibeat, Et deleat Peccata:
 罪を明らかにし、取り去ってください
Praestans auxilium
 助け導いてください
Vita frui beata
喜びと楽しみに満ちた生活へと
Post hoc exilium.
このさすらいの後に至れるように*3

*1 Conclaveは「鍵がかかっている」の意味。つまり密室に入ってきたのでびっくりしている。バチカンにおける教皇選出会議の語源。根くらべではない。
*2 「この門は閉じられたままにしておく。誰も開いてはならない。誰もここを通ってはならない。イスラエルの神、主がここから入られたからである。」(エゼキエル書44:1)より。神が通るときだけ開かれる門ということで、聖母マリアを「エゼキエルの門」「天の門」と呼ぶことがある。
*3 出エジプト記第16章における「荒野の四十年」、あるいはバビロン捕囚になぞらえている。

text&tune: 13世紀英国の作者不詳のキャロル

マリアは天使に言った。
「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」
「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。
だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。
あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。
不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。
神にできないことは何一つない。」
マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」
そこで、天使は去って行った。
(ルカによる福音書 第1章34-38節)

身に覚えもなく妊娠したのに安心して喜べとか無茶を言わないでほしい。
中世イギリスで非常に人気のあった、ラテン語によるキャロル。中世英語によるバージョンGabriel fram heven-king《天の王から遣わされたガブリエルは》もある。
チョーサー『カンタベリー物語』のうちの一つ「粉屋の話」に登場する軟派な学生ニコラスが、夜毎に竪琴で弾き語りをするのがこのキャロルである。
天使と処女の対話をテーマにした類似のキャロルに、Gabriel's Message《ガブリエルのお告げ》というのもある。

ムリーリョ「受胎告知」
b0310887_1155120.png


St. Albans Chamber Choir
収録アルバム: Christmas Across the Centuries


多分クレオベリー版
The Choir of Chester Cathedral, Benjamin Chewter and Philip Rushforth
収録アルバム: Glory to the New-Born King - Christmas Music sung by the Choir of Chester Cathedral

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by CockRobin96 | 2016-08-26 23:59 | Trackback(1) | Comments(0)

Beatus Vir《幸いな人よ》


Beatus vir,
幸いな人よ、
qui timet Dominum:
主を畏れる人は。
In mandatis eius volet nimis.
主のみこころのうちにあって大いなる喜びを得る、
Beatus vir.
幸いな人よ!

Potens in terra erit semen eius;
その人の子孫は地上で力を振るう、
Generatio rectorum
そして代々(よよ)いよいよに
benedicetur.
祝福される。
Beatus vir.
幸いな人よ!

Gloria, Gloria,
栄光あれ、栄光あれ、
Gloria et divitiae
栄光と富とが
in domo eius;
その人の屋敷にある。
Beatus vir.
幸いな人よ!

Et justitia eius
その人の正しさは
manet in saeculum saeculi.
とことわまでも続く。
Beatus vir.
幸いな人よ!

Exortum est in tenebris
闇の中にあらわれいでた
lumen rectis:
光がまっすぐに差す。
Misericors,
慈悲と、
et miserator
憐憫(れんびん)、
et justus.
そして公正の光が。
Beatus vir,
幸いな人よ、
qui timet Dominum:
主を畏れる人は。


Jucundus homo
正しき人とは、
qui miseretur et commodat.
憐憫に満ちて寛大な人。

Disponet sermones suos
言葉を選んで
in judicio:
裁きを行う人。
Quia in aeternum
今からとこしえまでも
non commovebitur.
決して揺らぐことがないだろう。

In memoria aeterna
とこしえに記念される
erit justus.
公正そのものとして。

Ab auditione mala
悪い知らせがあっても
non timebit.
恐れることがない。

Paratum cor eius
その人の心には備わっている、
sperare in Domino;
主への信頼が。
Confirmatum est, cor eius:
そしてその人の心は揺るがない。

Non commovebitur,
動揺することもない、
Donec despiciat inimicos suos.
多くの敵どもを目にしても。

Dispersit,
その人は分け与える、
dedit pauperibus:
貧しい人に。

Justitia eius manet
その人の正しさは遺(のこ)り続ける、
in saeculum saeculi,
とことわまでも。

Cornu eius exaltabitur
その人の角は高く掲げられる、*1
in gloria.
栄光のうちに。
exaltabitur in gloria.
栄光のうちに高く掲げられる。


Beatus vir,
幸いな人よ、
qui timet Dominum:
主を畏れる人は。

Peccator videbit,
罪深き者はそれを見て、
et irascetur;
憤るだろう。

Dentibus suis
彼らの歯は
fremet et tabescet.
歯ぎしりですり減る。

Desiderium peccatorum
罪深くあろうとする者は
peribit.
破滅するだろう。

Beatus vir,
幸いな人よ、
qui timet Dominum:
主を畏れる人は。

Gloria Patri,
栄光が父にありますように。

Gloria et Filio,
栄光がみ子にありますように。

Gloria et Spiritui Sancto.
栄光が聖霊にありますように。

Gloria Sicut erat in principio,
栄光が、初めにあったようにありますように。

Gloria et nunc et semper,
栄光が今も、そして限りなくありますように。

Gloria et in saecula saeculorum.
栄光がとことわまでもありますように。

Gloria, Gloria
栄光あれ、栄光あれ、
Gloria et in saecula saeculorum.
栄光がとことわまでもありますように。

Amen.
アーメン。

*1誇らしげな様子を、雄鹿や羊が角を振り立てる姿に例えている。

text: 詩編第112編を丸ごと歌詞にしたもの。
tune: Claudio Giovanni Antonio Monteverdi(1567-1643)

「fremet」がいかにも歯ぎしりっぽくて聴くたびに笑ってしまう。
モンテヴェルディはイタリアのルネサンス〜バロック期にかけて活躍した作曲家。彼の名を冠した合唱団もある。
ジョジョ第5部の登場キャラの一人アバッキオの好きな音楽というのが、このモンテヴェルディの《聖母マリアの夕べの祈り(聖母の晩課)》だったりする。見た目によらず古典音楽が好きらしい。ストーリーには全く活かされてないが。

Salisbury Cathedral Choir
収録アルバム: An English Chorister's Songbook

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by CockRobin96 | 2016-08-20 21:02 | Trackback | Comments(0)

Tai-Fu Tuan《太湖船》



山青水明幽靜靜(山青くして水明らかなり、幽かに静静たり)
山は青く、水はきよらかに、幽玄と静かなことよ。
湖心飄來風一陣(湖心にひるがえり来たる風一陣)
太湖の真ん中に一陣の風がぴゅうっと吹く、
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。
 
黄昏時侯人行少(黄昏の時候人少なに行く)
たそがれどき、人はまばらに行き交う、
半空月影水面揺(月影空半ばに水面揺れるなり)
月が空半ばにかかり、水面はゆらゆらと揺れる
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。
 
水草漫漫太湖岸(水草漫々たり太湖の岸)
水草がいっぱいに茂る太湖の岸辺、
漂來陣陣蘆花香(陣陣と漂い来たる蘆花の香)
あしの花の香りが絶えず漂ってくる、*1
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。

水色山光迎斜陽(水色山光斜陽を迎う)
水の色も山の輝きも夕日に照らされる、
湖面點點是(帆影湖面点々これ帆影なり)
湖面に点々としているのは小舟の帆影、
呀行呀行 呀進呀進
行けや行け、進めや進め。

*1 あし(よしとも。芦、蘆)は水辺に自生するススキに似た植物。清少納言には「見どころとてなし」とこき下ろされた(能因本にしか出てこないので、実はそんなこと言ってないという説もある)。本当にいい匂いかどうかは知らない。中国では違う植物のことなのかもしれない。

text: 慎芝
tune: 中国の民謡? 励迟(李厚襄(1916—1973)の筆名)とすることも。

サントリーの烏龍茶のCMで使われたので、知っている人は知っている。
太湖は中国江蘇省・浙江省にまたがる大きな湖。奇岩をよく産するのでも有名。汚染が進んで困っているらしい。
ようつべの訳を丸写ししたのではなく、前に訳したやつをいつの間にか使われてた。

もっと古い《太湖船》。歌詞もちょっと違う。


収録アルバム:SUNTORY OOLONG TEA CM SONG COLLECTION(CDしかない)

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by CockRobin96 | 2016-08-16 15:01 | Trackback | Comments(0)